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Special Interview
楽曲制作者 ハタユウスケさん
メンバーインタビュー編

マイナージャンルとアイドル楽曲の融合を楽曲面でのコンセプトとするRAYにおいても、シューゲイザー(90年代イギリスを中心に隆盛した轟音を一つの特徴とする音楽ジャンル)はその中心的な位置を占める。そして「シューゲイザーアイドル」としてのRAYを、楽曲提供という面から、またシューゲイザーシーンへの誘い、巻き込みという面からも力強く支えてくれているのが、シューゲイザーバンドの雄cruyff in the bedroomのハタユウスケである。RAYファンにも人気の高いユウスケの楽曲はどう生み出されるのか?RAYメンバーからユウスケにインタビューを行った。

■「書くこと自体は永遠に行けそうな感じがある」

内山結愛(以下内山) 5月8日のRAY 3周年ワンマンライブ「works」では、RAYのライブ活動を支えてくださっている周囲の方々にフィーチャーしていきます!ということで、今回は「世界の終わりは君とふたりで」や「尊しあなたのすべてを」、そして「愛はどこいったの?」「わたし夜に泳ぐの」を制作してくださった方、ハタユウスケさんにお話を聞いていきたいと思います。

 

メンバー一同 よろしくお願いします。

 

ハタユウスケ(以下ユウスケ) 改めてだとちょっと緊張しますね(笑)。

 

甲斐莉乃(以下甲斐) 早速なんですが、RAYに楽曲をたくさん提供してくださっているハタさんに役回りについてお伺いしたいなと思いまして、楽曲制作者さんは普段はどういうお仕事されているんですか?

 

ユウスケ 運営の方から今回はこんな感じの曲でどうですか?というご連絡を頂いて、いろいろ考えて、提出しております。

 

甲斐 依頼っていうのは結構具体的に言われるものなんですかね?

 

ユウスケ それはパターンですね。例えば「愛はどこいったの?」は結構細かかったです。「これこれこうで落ちサビがあって、落ちサビのところですごい歌うのが難しいようなメロディを作ってくれ」と、RAYの楽曲プロデューサーが(笑)。そんなこと言ってました。あれ、難しいですよ。

 

甲斐 毎回こういう曲が良いっていう大まかなイメージは伝えられるんですか?

 

ユウスケ あ、そうですよ。テンポ、曲のBPM(Beats Per Minute。一分間の拍数のこと)だったりは指定があります。で、毎回「歌詞はちょっとそっちでやってくださいよ」って言ったら「えー」って言われて、僕が書く羽目になるんですけど。

 

琴山しずく(以下琴山) RAYにたくさん曲を提供してくださっているんですが、楽曲提供以外も含め、具体的にRAYとどういう関わりがあるのか?ハタさんの目線から教えていただきたいです。

 

ユウスケ 僕はTotal Feedbackというイベントをやっているので、そこではいつもお世話になってます。RAYの皆さんありがとうございます。コロナ前なんて結愛ちゃんはほぼ毎月、DJかライブかで出ていただいてたんで。音楽ありきの付き合いをさせていただいているかなと思っています。

 

内山 この楽曲制作者というお仕事の難しさややりがいは何かあったりしますか?

 

ユウスケ やりがいはありますよ。初出しの時、俺毎回観に行ってますもん。やっぱり初出しはすごく興味あって、どうなるんだろうと思って。その後も時々、皆さんが記録用に撮ってる動画を送ってもらって見てますよ。ちょっとあれ見たいんだけどっておねだりしてるんですけど。

 

内山 私たちもいらっしゃるって聞くと「やばいやばいやばい…」って思います。

 

ユウスケ わかりますよその気分は(笑)。僕も昔カバーバンドのライブがあって、歌ってたらご本人がいたとき、本当勘弁してくれって思ったことあります。いやめっちゃ酔っ払ってましたけど(笑)。終わってから「最高だ!」と言われて、そりゃそうだろうと思ったんです(笑)。

 

内山 難しさとかってあります?

 

ユウスケ いや、今のところ感じてないです。曲を書くこと自体は多分得意なので、そこはあまり難しいと思わない。ただ、最初に何となくラフみたいな感じで書いて作って、そこから3日置いたりはするんですけど。プール行ったりとかジョギングしたりとかする時に、ずっと頭の中でメロディー考えながら……で良いものを思いついたら、プール上がって家帰って書く、みたいな感じでやります。曲を書くこと自体は永遠に行けそうな感じがあるんで、そこだけは得意かなと思う。

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■ハタユウスケの楽曲制作法1 〜メロディ〜

甲斐 ちょっと気になったんですけど、RAYに提供していただいた楽曲は、ライブではアイドルなので歌って踊ってっていう振り付けがつき、ポジション移動を含めたパフォーマンスになります。そのRAYの全体的なパフォーマンスによって、自分が作った音の表現っていうのが目に見える形になるじゃないですか。そのときに感じることってあったりしますか?

 

ユウスケ 単純に嬉しいですね。観てて、ああ、こうやってやるんだみたいな。例えば「世界の終わり」でまのちゃんが端から端に走るとか見て、「あ、ここまのちゃん走る!」と思いながら観てます(笑)。真似して踊れはしないけど、「あ、こうやってるよな」みたいな。結愛ちゃんよくこうやってマイク持ってるな、とかは気付いてます。

 

内山 むちゃくちゃ見てますね(笑)

 

ユウスケ 見てます、見てます。それはもちろん。

 

甲斐 ハタさんがその他のクリエーターだったり、プレーヤーだったりと異なる点というか、自分で感じている強みだったりは何かあったりしますか?

 

ユウスケ RAYに限らずですよね?僕にお願いしてもらえる時って、僕の書くような曲をあえて狙ってオファーしてくれてると思うので、今の所いろいろやりましたけどしんどかった仕事っていうのはないですね。多分わかってオファーを出してくれてるからだと思うんですけど。だからそういう意味では甘やかされてる感じですね。

     こんなのやりたいなと思った曲やメロディで、自分のバンドにはちょっと違うなっていう時とかは、外部用にメロディーのストックを別にしてあるんですけど、それがiPhoneにいっぱい入ってるから。そこから今回の依頼だったらこんな感じなのかなと引っ張り出してきて、広げていく感じですかね。

 

内山 メロディのストックは、もうiPhoneに無限にある?

 

ユウスケ あります。まあ無限ではないんですけど(笑)、iPhoneの中にいっぱい入ってて。

 

内山 落としてしまったら怖い……。

 

ユウスケ 今だとiPhoneだから、iTunesとリンクするじゃないですか?前はレコーダーとかで録ってて、壊れて……俺の1年間どこ行ったんだ、返せ!みたいな時がありましたよ。でもそういう時は自分の中で、「じゃあ、あれはもう日の目を見なかったんだ」と思うことにして。でも時々思い出したりするんですよね。多分強度が強かったんですよね。だから思い出したら、そこから広げますけど。

 

内山 (メロディが)降ってきたら降ってきたうちに録りますか?

 

ユウスケ 録ります、録ります。すぐ。

 

内山 どこの場所にいても?

 

ユウスケ 不審者になりますよ。

 

内山 電車の中とかもあります?

 

ユウスケ 電車は……ない。電車だったらもうずっと頭の中で反芻して。でも大抵そういう時ってメロディー変わってきてるんですよね(笑)。でもバッと降りて物影行って、電話しているフリして歌って。

 

甲斐 めちゃくちゃわかります。自分もするようになりました。


ユウスケ ある時にちゃんと残しとかないと……まあ、さっきの話とちょっと矛盾するけど、キープしときたいですよね。それからまたどうなるか分かんないっていうのがあるから。

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■音楽の道に進んだきっかけ

甲斐 ハタさんはいつから作詞作曲を始めたんですか?

 

ユウスケ 僕中学の時にバンド、というかまあ集まって音楽をやってたんですけど、音楽はもう小学校の頃から大好きだったので。自分で自信が出たというか俺才能あるかもって勘違いしたのは、中学の音楽の授業で「音を何音かだけ使ってメロディーを作れ」みたいのがあったんですよ。その時に俺が作ったやつがどうやら前例がなかったみたいで、先生が「おっ!」って言ったんですよ。で、俺もしかして才能あるかも!と思って、そこからの勘違いからだと思います……恥ずかしいなあ今日(笑)。

 

内山 中学生から始まってたんですね。

 

ユウスケ そうですね。中学のときにあの先生のあの顔がなかったら、この仕事をやってないかもしれないです。今何してるんでしょうね、あの人(笑)。

 

甲斐 きっかけが聞けてすごく嬉しかった。

■シューゲイザーというシーン、シーンにおけるRAY

琴山 RAYはシューゲイザーっていう音楽性をとても大切にしているんですが、シューゲイザーシーンにおけるRAYの位置づけだったり、意味付けはどんなところにあるとお考えでしょうか?

 

ユウスケ RAYよりちょっと前になりますけど、ドッツトーキョー(アイドルグループ「・・・・・・・・・」の呼称の一つ)が出てきて、日本のというと大げさだけど東京のシーンは絶対変わりました。やっぱり女の子たちがポップでシューゲイザーをやるみたいなのはなかったし。やっぱり周りも何あれ?みたいに湧いてたし、情報入ってくるんで俺も知ってたんです。で、これ俺ちょっと待ってたら連絡来るんじゃねーかと思ってたら連絡来たんです(笑)。

     それで、そこからは運営の方と友達みたいになって、同郷なのもあって仲良くさせていただいてるんで、もう客観的に見れなくなってます、正直RAYに関しては。でもTotal Feedbackってイベントやってる以上見ていると、マジRAYがいてくれて本当に嬉しいです。

 

内山 私たちもバンドの方々に入ってっていう機会が本当にTotal Feedbackでしかないので、すごく貴重な機会です。

 

ユウスケ RAY自体にもフォーカスしている音楽ジャンルがいろいろありますけど、シューゲイザーって看板を掲げてくれてるから、こっちとしてももうめっちゃウェルカムだし、結愛ちゃんなんてDJ始めてもらったりとかそういうところからなんで……僕はRAYに関してはもう、それこそ台本に「RAYが何を貢献したらいいか」みたいなことを書いてくれてますけど、充分です。ここまでやってもらって本当にありがたいと思っています。

 

内山 ありがとうございます。

 

ユウスケ とんでもないです。

 

内山 話にもでたTotal Feedbackなんですけども、RAYも出演するTotal Feedbackを主催したり、またRAYメンバーが出演するサムキャン(SOME CANDY TALKING。Total Feedbackに関連した動画コンテンツ)では英語字幕をつけたりなど、ハタさんの活動には自身の所属グループを超えたシーン・界隈を盛り上げようという意図を感じます。どのような思いを持って、このような活動をされているのか?また、グループのプロモーションとは異なる留意点などあれば教えてください。

 

ユウスケ いや、僕やりたくないですよ、一番上みたいなの(笑)。本当言うと、自分のバンドと、RAYとか他の人もそうですけど曲を書いて、ミュージシャンだけで生活したら絶対一番楽しいと思うんですけど。誰もやってくれないのと、なんか気付いたらやってたっていう感じだったんで、自分としては誰か変わってくんねーかなって言うのは正直、今でもあるんですけどね。

 

内山 ハタさんだからこそ繋げられる輪みたいなのが……Total Feedbackの空気感というか、居心地がすごくいいなと思って。

 

ユウスケ いや嬉しい。

 

内山 バンドさん方も、「なんでアイドルいんの?」とか、邪念じゃないですけど、フィルターがかかった状態で見られることも多いはずなんですけど、Total Feedbackではみんなフラットにというか、同じ音楽を届ける仲間みたいな感じでRAYを受け入れて下さっているのがすごく嬉しくて。それはもうハタさんの……

 

ユウスケ 違うでしょ?それはRAYがやっぱ単純に受け入れられているっていうか。実際もう、現状ここ数年、Totalのエースやってもらってますから。もうセンターですから(笑)。やっぱりRAYがいる時といない時っていう感じもあるし、まあそれはいいこともあるしっていうことではあるけど。

     でもそうやって言ってもらえるのは、僕はとても嬉しいですね。多分周りのバンドもそう思っていると思うんですけど。

 

内山 RAYのファンの方々もTotal Feedbackを通して新しいバンドさんに会ったり。もうRAYが出てなくても、そのバンドさんがTotal Feedbackに出てたら行くみたいな人も結構いるので。

 

ユウスケ いらしてますね!

 

内山 繋がっていってると思って。

 

ユウスケ あの子とか面白いじゃないですか。あのMoon In Juneのベースの子とか、完全にRAYファンになって毎回チェキ撮ってて(笑)。

 

内山 出演者の方々もわざわざチェキで会話をしに来てくださって。

 

ユウスケ なんかでも見てると、やっぱりもじもじして「チェキ行くなんて」みたいなのも時々いますけどね。行きゃいいじゃんと思って。

■作曲におけるインスピレーション元、参照曲

甲斐 作曲時のインスピレーションの元となるものがあったりはありますか?

 

ユウスケ あんまりないです。前もまのちゃんと話したことあると思うんですけど、マジ夢の中で見ることあるでしょう?曲。ああいうこともあれば、依頼を受けてどんな感じでって言われて頑張って作るパターンもあるし、さまざまですね。あんまりインスピレーションの元はないですよ。

 

甲斐 この人の楽曲が好きで、ちょっと今回はこの人の楽曲に似せようかなっていうのもないですか?

 

ユウスケ 昔はありました。参考にしている曲みたいな。それこそcruyff始める頃とか、その前の90年代もコラージュの文化みたいのがあって、人の曲をパクるわけじゃなくわざとメロディーそのまま節回し・歌詞使ったりとか、それがかっこいいっていうか。そういう時代があったんですけど、その影響は正直受けているので。例えばマイブラ(My Bloody Valentine )の「you made me realise」って曲があるんですけど、「you made me paralyze」って曲をcruyffで作ってリフもほぼ一緒にしたんです。こっちはふざけてるんですよ、冗談で「面白いでしょ?」ってやってても……怖いんですよ。怒ってくるファンが(笑)。

 

内山 いるんですか?(笑)。

 

ユウスケ めっちゃ言われましたね。なめてんな、みたいな感じになって。あと他にもRide。僕、Ride大好きなんで結構まんまにやった曲があったんですけど、それはご本人と会った時に謝りました(笑)。

 

内山 ご本人と会えたのが(すごい)。

 

ユウスケ 対バンしたんですよ。今はなき代々木Zher the ZOOでMark Gardenerのソロライブがあって、その時すごくて。メンバーはZEPPET STOREの木村世治さんとbloodthirsty butchersの吉村秀樹さんとか……俺なんか大事な人漏らしてないだろうな(笑)。先輩ばっかりで、DJがthe brilliant greenの方とか、俺が一番年下だったんですけど。その時たまたま英語がちょっと喋れるのが俺だけだったんで、ずっと(Mark Gardenerと)一緒に話して。「お前、ちょっと髭剃り貸せ」とか言われて、どうぞって髭剃り貸したりとかしましたね。

     Rideはもうやっぱ好きなんで、好きすぎて出ちゃいました。今はないです。いろんなバンドをちょこちょこ聞いてるんですけど、まあ結愛ちゃんほどは聞いてないですけど、聞いてても何ていうか、一回聞いたことあるような感じというのかな。すげえいいメロディってやっぱいつでもあるんですけど、サウンドの傾向としてはある程度分かってる感は……あんまりよくないですねこの会話(笑)。なんかどっかでそういうのがちょっとあって。メロディーは普遍です。いつまでたっても良いメロディって出てくるから、やっぱり僕はそっちでいたいです。すみません、まとまらなくて(笑)。

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■ハタユウスケの楽曲制作法2 〜歌詞〜

琴山 歌詞とメロディのどちらを先に作ることが多いですか?

 

ユウスケ それも決まりがなくて。曲を作ってて、なんとなく取っ掛かりのAメロみたいなのがあり、それを形にしようってギターを持って引き出したら、調子いい時はそのままサビまで行けるんですよ。サビの先に歌詞ごと出てくる時があるんですよ。それが多分一番いいパターン。でもこれRAYでもあったと思いますよ。(「わたし夜に泳ぐの」のサビの)「そばにいてね」とか、多分そのまま行ってます。でもでも、たまたまですね。たまたまうまくいった例で。

 

琴山 電車の中とかでメロディが浮かんだら携帯(iPhone)にメモするとおっしゃったじゃないですか。その際は言葉を言いながらメモするんですか?

 

ユウスケ そうですね……ある程度自分の中でアレンジみたいなのが固まる時があるんですよ、メロディーを思いついて。ちょっと調子に乗ってAメロ作ってみようみたいな、頭の中でね。その時に余裕があると歌詞もどんな感じっていうのを妄想してるんですね。その時に出てくることもありますし、あと歌詞になるようなフックの言葉も携帯のメモに入れてます。映画とか観てると「やば、これ」みたいなのあるじゃないですか?このセリフ、超カッコいいとか。そういうのは入れてます。

 

琴山 今ストックしてたあの言葉使おう!とか。

 

ユウスケ そうですね。RAYの楽曲では僕、歌詞もやらせてもらってるんですけど、どうしようかなと思ってたまたま出てきた時はそれでいきます。でも考えている時ってやっぱり、まのちゃんも作るからわかると思うんですけど、「ここの二行はできてるけど、この一行のこの締めの言葉が見つかんねぇ、どうしよう」みたいな。そういう時にメモを見て、あーはまった、とか。

 

甲斐 ハタさんが曲を作るとき、曲のすべての構成、つまりAメロBメロサビまで含むメロディーと歌詞全体について、どのぐらいの速度感で1曲を完成できることが多いですか?

 

ユウスケ 最終的に完成するまでには幅はあります。一瞬で出来てしまって、一緒に曲作ってるYoshikiに送って、Yoshikiが「ちょっと早すぎる」みたいに間に合わない時とかもあるんですよ。でも僕せっかちなんでどうしてもすぐ終わらせたくて、「Yoshiki、まだ?まだ?」みたいになるんですけど。と思えば作っておいて「あ、やっぱりちょっとサビのこのメロディ変えた方が良いな」とかは随時あります。

     最近RAYとは違う方に曲を作ったんですけど、その人の曲は結構最後までずっと悩んでて。ただもう年内に終わらせるって決めてたんで、「ここで」って自分で決めて終わらせました。ただ、Yoshikiは多分大変だった。毎日違うギターのフレーズが送られてくるから、「最終的にどれが正解なのかな?」とこんがらがったと思います。

 

内山 結構振り幅があるってことですかね?

 

ユウスケ 多分なんとでもなるんですよ、曲自体の構成とかアレンジとか。だからどれが一番いいのかっていうのはやっぱり考えるんですけど、あんまり納期に時間があり過ぎたりすると考え過ぎちゃって、なんか複雑になったりするんです。僕、ライブでもなんでもそう思うんですけど、結局シンプルなものが一番強かったりするじゃないですか、強度というか。僕はもう、今はなるたけシンプルにしようとはしてます。

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■メロディの重要性

内山 次の質問に行きたいと思います。これは内山からの質問です。これまで「世界の終わりは君とふたりで」「尊しあなたのすべてを」「愛はどこいったの?」「わたし夜に泳ぐの」の4作を作っていただいたんですが、これはもう間違いなく売れるとか、お気に入りだっていう自分の作品はあるんですか?

 

ユウスケ それはあの……一番新しいのが毎回思ってます。

 

内山 ああ、なるほど。

 

ユウスケ 皆さんの運営さんと関わるようになったのはドッツトーキョーの曲だったんですけど、「いくつかの夜、いくつかのさよなら」の時が結構自分でも転機でした。あー、こういう曲の作り方あるんだとか、できるんだとか。運営さんからの「こんな感じ」っていうディレクションもすごい良かったんですよね。一回出したやつを一回直したんですが、運営さんから確実なメッセージがあって、「あの、これはこうなんでこっちどうですか?」みたいに言われてそれがすごい的確で。そこで僕らは信頼関係ができた気がしますね。あれもう2017年とか。そこからだから、もう俺このチームと5年ぐらい付き合ってるんですよね。その間、ずっと何曲も曲作らせてもらいました。

     作っていくにあたっては、セカオワ(世界の終わりは君とふたりで)はRAYでの初めての僕の制作だったので、イントロから「ちょっと来ちゃったんじゃないの?」ってやっぱちょっと思いましたし、「わたし夜に泳ぐの」とかは(とても良くて)「あれ〜、やっちゃった?」ってちょっと思いました(笑)。

 

内山 やっちゃってます(笑)。この曲はすごく人気が高くて、リクエストアワード※でも(順位が良かった)。

※2021/12/12に開催された「RAY 大阪ワンマン -リクエストアワード-」のこと。ファンによるRAY楽曲の人気投票が行われ、ユウスケによる楽曲「世界の終わりは君とふたりで」が1位に、「わたし夜に泳ぐの」が3位となった

 

ユウスケ 見ましたけど、あんなに良い気持ちになったの久しぶりだった(笑)。嬉しかったです。多分なんですけど、お客さんと世代的に結構近いんですよ、多分40代ぐらいですとか。まあRAYのお客さんには若い方もいらっしゃいますけど、特に男性の方、特にあの辺の感覚に近いんじゃないですかね?こういうメロウさとか、なんかこういう艶っぽさとか、多分その辺を共有してるんじゃないかなと思います。

 

内山 でも結構、ハタさんの曲はどの年齢にも伝わるというか。私も刺さってる。

 

ユウスケ わ、嬉しい。

 

内山 だから、確かにその年齢の趣味とかと被っている部分はあると思うんですけど、どのジャンル、どの年齢でも届く音楽だなって私は思いました。

 

ユウスケ ちょっと褒められすぎな気がするんですけど(笑)。でもそう言ってもらってるのが本当にみんなの事実であるとした場合、単純にやっぱり僕がメロディーを大事にしてるからかなっていうのはどこかにあります。やっぱり一番大事なのは絶対メロディだと思うんで。サウンドは本当になんとでもやりようがあるんですよ。こっちのギターもハマってるね、こっちもハマってるね、このベースも合ってるね、と……けれどもそれは結構好みでしかなかったりして。でもメロディーだけは、書ける書けないっていうのがすごい大きい気がしますね。

 

内山 そのメロディーを今後も大切に歌っていきます。

 

ユウスケ ぜひお願いします(笑)。

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■ハタユウスケの楽曲制作法3 〜楽曲テーマとタイトル〜

甲斐 はい。次は自分の質問です。また曲作りに関しての質問なんですが、曲を生みだす時に曲のテーマだったり、描きたいことっていうのは毎回持っていて、すぐ思いつくものなんですか?

 

ユウスケ 歌詞が一番(明確には決まっていないですね)……たまたま出てきたものから膨らませることはよくあります。正直、あれを歌いたいこれを歌いたい、みたいなものは前に比べて明確なものがあんまりないんですよね。でも都度都度はあるし、曲ができることによって、「あ、これはこういうことが良いな」とか、なんか想像して歌詞を書いていることが多いです。

 

甲斐 そうなんですね。じゃあ歌詞を書いた後に、この曲は大まかにこういうテーマなんだっていうのが後付けで……

 

ユウスケ あ、ううん。歌詞を書く時にはやっぱりテーマは決まってます。

 

甲斐 あ、決まってるんですね。

 

ユウスケ うん。尊し(尊しあなたにすべてを)とかは、もう「愛について」みたいなだけで、それだけ考えて。「愛し」の次に「恋し」がきて、わぁやべえ!みたいな(笑)。で、最後に「尊し」ってくる感じがやりたかったことですね。

 

琴山 その歌詞を作ってる最中に、自分の中で歌詞の映像みたいなものって浮かんだりするんですか?

 

ユウスケ 残念ながら、僕は映像へのアウトプットがあんまりないと思います。映像から受けることはよくあって、絵も映画も観るのは好きなんだけど、自分がそっちのクリエイトできるかっていうと、あんまり自信はないですね。逆に「この映画の曲、俺がやったほうがいいのに」って思うことはあります(笑)。

 

甲斐 タイトルとなる曲名は、その楽曲のイメージであってテーマを表す大切な部分だと思うんですけど、毎回どのようにして決定してますか?

 

ユウスケ またちょっと話戻るんですけど、ドッツトーキョーの「いくつかの夜、いくつかのさよなら」の曲名って、俺が考えたんじゃないんですよ。歌詞は俺なんですけど、曲名を作ったのは運営さんです。「どうします?」みたいな話をしてて、そしたら運営さんが思いついて投げてくれて、一発で気に入ったんですよ。すげえいいタイトルだなと思って。あれが未だに自分の中で指針になってます。あ、こういうロマンティックさが僕が一緒にやりたいアイドル像に近い、というか。ある意味RAYでやらしてもらった4曲に関しては、僕のロマンティック、ナルシズムを無理やり受けてるだけなんですけど(笑)、ああいうロマンティックさっていうのは素晴らしい運営の方だなと思います。

 

甲斐 ありがとうございます。

 

内山 質問は以上となります。これからもRAYの素敵な音楽を生み出してください。

 

ユウスケ こちらこそよろしくお願いします。

 

メンバー一同 ありがとうございました。

今回のメンバーインタビューでは、シューゲイザーシーンを牽引するユウスケとRAYの関わり、楽曲のメロディ、歌詞、テーマ・タイトルといった構成要素の発想・制作法まで伺った。ユウスケが重要性を強調する「グッドメロディ」は、多くのファンを魅了し続けている。運営インタビューでは、単なる音楽に閉じず、ファッション、カルチャー、シーンと周縁領域にも目を配りながら、シューゲイザーシーンを形作ってきたユウスケの思いや人間性により深く迫る。

 

Special Interview 楽曲制作者 ハタユウスケさん 〜運営インタビュー編〜

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