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Special Interview
ヘアメイク 山田季紗さん
メンバーインタビュー編

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アー写やMV、ライブをビジュアル面から支えるヘアメイク。「顔」というアイドル(活動)における重要な要素は、どのように彩られていくのか。これまでスチール写真を用いたグッズやMV撮影、ライブ等でRAYと関わっていただいているヘアメイクの山田季紗さんに、今回RAYメンバーがインタビューを行った。仕事内容ごとにヘアメイクはどう違うのか、そして汗をかき特典会が控えるライブ現場におけるメイクテクニックまで伺っていく。

■ヘアメイクの仕事と依頼の仕方

甲斐莉乃(以下甲斐) 5月8日開催のRAY 3周年ワンマンライブ「works」では、RAYの活動を支えてくださっている方々にフィーチャーしていきます。本日はヘアメイクの山田季紗さんにインタビューを行っていきたいと思います。

 

山田季紗(以下山田) よろしくお願いします。

 

メンバー一同 よろしくお願いします。

 

琴山しずく(以下琴山) まずヘアメイクさんとはどういうお仕事か教えていただきたいです。

 

山田 日本でいうヘアメイクさんの仕事は、メイクをしたりヘアアレンジで髪型を変えたりすることがメインですね。こういう業界じゃない人に職業を言うと美容師と勘違いされることが多くて、「美容室とかサロンに勤務されてるんですか?」って言われることが多いんですけど、私はヘアメイク一本でやっています。

   私の場合は、初めましての人もいれば何回も一緒にお仕事してる人もいるんですけど、原則的には毎日違う場所に行って、自分がやりたい形でヘアメイクが出来る時もあれば、広告とかクライアントさんがいて意向に合わせて作ったりする時もあります。ドラマとか映画とかだったら別ですけど、簡単に言うと最終的な結果として男女問わず綺麗にする仕事ですかね。

 

甲斐 ヘアメイクさんへの依頼って基本的に(芸能系の)事務所などから来ると思うんですけど、一般の方からの依頼もあるんですか?ある場合、どういう目的の依頼なのかを教えていただきたいです。

 

山田 最近だとSNSを通してヘアメイクに興味がある人がすごく増えてきています。基本的に一般の方は結婚式用のヘアメイクか、ヘアメイクを教えてもらいたいという依頼が多いかなと思います。

 

甲斐 じゃあ気軽にお願いできるものなんですね。

 

山田 そうですね。普段モデルさんにメイクをしているヘアメイクさんはコンタクトを取りにくいと思われていると思うんですけど、最近はそれこそSNSでDMが来たりということもあります。依頼を受けるか受けないかは日程の問題などもあるのですが、今はYouTubeをやっているヘアメイクさんもいて、昔よりは簡単に一般の方でもコンタクトが取れるようになってきました。

 

甲斐 業界の方しかコンタクトがあまり取れないかと思ってました。

 

山田 全然全然。私も別のアイドルの子で直接依頼を受けたことがあります。「どうしてもここのタイミングでヘアセットして欲しい」って言われてヘアセットしたりとかはあります。

 

甲斐 自分もお願いしたいと思います。

■RAYとの関わり、ヘアメイクのやりがいと難しさ

内山結愛(以下内山) 覚えている範囲で大丈夫なんですけど、具体的にRAYではどういう風に関わってくださったのか教えていただきたいです。

 

山田 最初はいつかの夏の、写真集とブロマイド用の浴衣撮影でした。埼玉でしたっけ?

 

内山 古民家の時ですね。結構遠かった記憶が。

 

山田 その後が「Melty Kiss」シリーズで、あとは「白川さやか卒業公演 -ひかり-」、そして「コハルヒ」のMVですね。

内山 ありがとうございます。浴衣や「Melty Kiss」の撮影と、ライブ時のメイクではかなり系統が違うと思うんですけど、運営さんからどういう依頼があったのでしょうか?

 

山田 浴衣の時は初めましてでどういう感じが良いか分からなかったので、浴衣に合うヘアアレンジで、メンバーの好みを聞いて「各メンバーのメイクのこだわりは汲みつつ、あまりやりすぎない程度に」という感じでした。

 「Melty Kiss」はやっぱりナチュラルメイクではないじゃないですか。だから「服が強い分、顔が負けちゃうことがないように割と濃いめに可愛い感じで作って欲しい」って言われましたね。ライブの時はそんなに指定はなかったですね。

 

甲斐 そうなんですね。

   お仕事のやりがいと難しさについて教えて欲しいです。

 

山田 「頼んで良かった」「メイクしてもらって嬉しかった」と言ってもらえることが一番やりがいを感じる瞬間であり、嬉しい瞬間でもありますね。

   難しさは……私、人見知りなんですよ。仕事のスイッチが入っていれば喋れるようにはなったんですけど、人見知りなのでやっぱり初めましてはちょっと緊張するというか。初めましてで会って5分でパーソナルスペースにずかずか入り込んでいってヘアメイクをしなきゃいけないので、距離感を詰めすぎると嫌がる子は嫌がるし、逆にメイク中にトークが始まらないと次の撮影に気分が上がらない子もたくさんいるし、その子のテンションに合わせるというか空気を読むことがちょっと難しい時はありますね。

 

甲斐 確かに難しいですね。

 

山田 そうですね。他の職業に比べて人との距離が特に近いので、人付き合いというか距離感の取り方が難しいかなと思います。

 

甲斐 よくわかりました。ありがとうございます。

■ライブ時のヘアメイクのコツ

琴山 山田さんご自身が普段メイクされる時のメイク方法を、依頼された方に実践してみようということはありますか?

 

山田 そんなにないですかね。アー写や広告の撮影で「こういう衣装でこういうメイクが良いです」とクライアント側から提案されても、全く普段の自分と違うメイクだったりするんですよ。「やったことないよ、こんなの」みたいな(笑)。で、逆に一回自分にやったりとか。

 

琴山 練習として、ということですか?

山田 はい。なので自分のメイクをやることはないですね。新しくファンデーションとかアイシャドウを買った時に試したりとかもありますけど、基本は自分の顔は練習台で。というか普段の自分は超適当なので(笑)。自分のものの何かをやるというよりも、やらなきゃいけないことを自分の顔で一回試してみることが多いかもしれないですね。

 

内山 基本的に私たちは、ライブの時は自分でメイクしていることが多いです。自分でメイクをして人前に出ているアイドルさんにアドバイスがあれば教えていただきたいです。

 

山田 アドバイス……何だろうな。いつもめっちゃファンデーション厚いなって思います。だって肌が綺麗なのに何でそんなに隠すんだろうって思うんですよ。ライブってめっちゃ光が強くて飛んじゃうんだから、別に肌をそんなに作らなくてもいいじゃんって。

 

内山 なるほど。

 

山田 ……っていうのをいつも思ってました。「もうファンデーションいいよ!汗かいたらヨレる(※)よ」って(笑)。

(※皮脂や汗などによりファンデーションが浮き上がり、それがしわや毛穴など顔の溝に溜まって化粧が崩れてしまうことを「ヨレる」という。)

 

内山 ドロドロに(笑)。マスクもするし余計崩れますよね。

 

山田 クッションファンデとか崩れやすいもので厚塗りにするから余計にヨレちゃうなって。

 

琴山 えー!クッションファンデってダメなんですかね?

 

山田 合っていれば良いと思うんですけど、下地塗ってクッションファンデ(※)やってコンシーラー(※)やってみたいな厚塗りで……。比べちゃうとやっぱりリキッドファンデーション(※)の方が水や汗に強いのでそっちの方が良いかなとは思います。

(※クッションファンデ:クッションファンデーション。リキッドファンデーションをスポンジに染み込ませたもの。リキッドファンデーションより時短向き。

  コンシーラー:クマやニキビ等、気になる部分を隠すためのもの。

  リキッドファンデーション:水分と油分、粉体が混ざったタイプの液体ファンデーション。)

 

内山 髪型のアドバイスはありますか?

 

山田 いや、これめっちゃ難しいですよね。髪型ってね。

 

内山 特に前髪を気にする子が多いですよね。前髪が割れないようにするアドバイスがあれば。

 

山田 割れないようにするの超難しいですよね。汗をかく量は人によって違くて、ライブでも全く動かなくて汗に超強い前髪を作れた子もいれば、違う子に同じように作ってもその子の汗の量が違いすぎて割れちゃうということもあるので一概には言えないんですが、私はいろんなスプレーを使ってる気がします。

 

内山 確かに。何本も持っていらっしゃるヘアメイクさん、いますね。

 

山田 1回スプレーしてドライヤーで固めて、もう1回スプレーしてドライヤーで固めてっていう方法を結構やります。ドライヤーの温風で急速に固まるんですよ。

 髪巻いた時とかもそうですけど、熱を通して冷えた瞬間が一番綺麗に巻きが残るんですよ。なのでスプレーをシューってやって温風で一気に固めるんですよ。じわじわってよりも一気に固めると割と動きにくいですね。遠くからかけて温風でやって、あと足りないところだけやってみたいな。

 

甲斐 やります。

 

琴山 めっちゃやってみたいです。

 

内山 勉強になります。

■ヘアとメイクの両立

甲斐 ヘアメイクってヘアとメイクを両方やるので、どっちかが苦手だなということがあるんじゃないかと個人的には思うんですが、両方やることについて難しさだったり苦戦したところはありましたか?

 

山田 最初はありました。ヘアメイクっていう仕事に就いて今7年目なんですが、専門学校を卒業して最初の頃は割とどっちも苦手というか同じぐらいだと思ってたんですけど、先輩がやってるのを見ていると「結局どっちも出来てないな」っていう感じから始まりましたね。

   1個1個なんとなく分かってくるんですけど、時期によってメイクの方が苦手な時期とヘアの方が苦手な時期みたいなのが生まれてくるんですよ。不思議なんですけど、どんどんこだわっていくからか誤差が生まれてくるというか。

   ヘアばっかりに集中してたらメイクが分からなくなるみたいなのがあったりして、徐々に1個1個メイクの苦手な所を潰してヘアの苦手な所を潰して……みたいに解消していきましたね。私は交互にメイクが苦手、ヘアが苦手みたいな感じでした。

 

甲斐 積み重ねていって解決していったということですね。

 

山田 そうですね。そんな感じでしたね。

■汗はキッチンペーパーで

甲斐 話が変わるんですけど、RAYはライブ中の写真撮影が可能でファンの皆さんが撮った写真をSNSに載せてくださっているのですが、そういう撮影可ライブ時のアイドルメイクについて、アドバイスはありますか?

 

山田 いろんな人を見るけど割とRAYは踊るっていうイメージがあるので一番難しいなあと思って……なんだろう。逆に質問返しで申し訳ないんですけど、踊ってる最中は顔とか気にしてるんですか?

 

内山 多少は気にします。

 

甲斐 自分は特に髪の毛が崩れやすいんですけど、崩れてくるとそっちにちょっと集中が取られちゃったりしてまずいなって思いながらライブしたりとかはあります。

琴山 私はライブですっごい汗かくのでライブの後半はぐちゃぐちゃになっちゃっていつも諦めてるんですけど、汗が収まる方法とかってありますか?

 

山田 私も知りたい(笑)。いろんな人にそれが分かったら教えたいけど……。

 

甲斐 顔に汗かいた時、何で拭いたら一番良いんですかね。

 

山田 普通にタオルとかティッシュとかが一番だと思うんですけど。直すときは拭くというよりかは押さえてあげるのが一番なんじゃないかなと。あとキッチンペーパーは水分を吸収するから良いですよ。汗も吸収してくれるのでペーパーを切って持っていったりします。

 

甲斐 今後、私も切って持ち歩きます。

 

山田 ティッシュとかって急いでたりとかすると肌にくっつくというか。

 

内山 繊維とかが。

 

山田 そうそう、キッチンペーパーはつかないのでおススメです。

 

内山 確かに。これは有益な情報を得ました。

■ヘアメイクの流行と実際のヘアメイク

内山 続いて次の質問に行きたいと思うんですけど、メイクさんの持っているメイク道具やテクニックについて、それらがまだ一般に流行る前からヘアメイク時に活用してくれているように自分は感じているんですが、そういった最先端の流行や情報はどこから収集しているんでしょうか?

 

山田 多分皆さんと一緒でインスタとかが多いですかね。私は雑誌系のヘアメイクさん、例えばコスメブランドから今季出るアイシャドウを使ったメイクのビジュアルが雑誌に載ってたりするんですけど、ああいうのをやっているメイクさんとか、ブランドに付いているメイクさんのインスタを見たりとかですかね。

   あとは雑誌のヘアメイクさんは、雑誌が出るタイミングで発売される化粧品が会社に届いていていち早く持っていたりするので、大体何か月後にこういうのが出て何か月後にこういうのが出るみたいなのが分かってくると流行りの色味が分かったりとかします。あと洋服も同じように先取りして、次の秋冬にも流行るんだなとか情報を得ることが多いかもしれないです。

 

内山 ありがとうございます。

 

甲斐 その人に合うような色味だったり、こういうポイントを付け足したら良いんじゃないかとか、その人に合うメイクを汲み取って意識的に作り上げていたりしますか?

 

山田 そうですね。ヘアメイクには目を大きくしたいとか鼻を高く見せたいとかコンプレックスをいかに補正するかっていうところがあると思うんですけど、色に関しては「ブルベ」「イエベ」(注:ブルーベース、イエローベース。生まれ持った肌色の色合いの分類で、パーソナルカラーの基本分類となる)みたいな言葉もあると思うんですが、似合わない色でも入れ方によっては似合ったりするので、私はあんまり気にせず直感を大事にしてますね。

   顔のバランスを見て、例えば「この子にアイラインを入れたら二重幅が潰れるな」とか、「この子の顔にこう濃く作ったらめっちゃ老けるな」ということをいつも考えています。あとは絶対顔って左右非対称なので、シェーディング(注:立体感や陰影を出すためのメイク)を右側は強く入れてあげなきゃいけないなとか左右の二重幅の幅が違ったら広い方にアイラインを太めに入れようとか、顔のバランスを均一にしようっていう努力はしてますね。

 

甲斐 細かな工夫をいろいろとしてくださっているんですね。

 

山田 そうですね。意外と結構考えているかもしれないです。

■ヘアメイクにとってのアシスタント時代とは

琴山 メイクをしていただいた時にヘアメイクさんのアシスタント時代の話をお聞きすることがあったんですけど、アシスタント時代の期間の長さや独立できる基準など、どうやってアシスタント時代を乗り越えてこられたのかというのが気になるので教えていただきたいです。

 

山田 実は私はアシスタントというものをほとんど経験せずヘアメイクをやっています。一応師匠みたいな人がいるんですけど、師匠もアシスタントはあんまり経験せずヘアメイクさんになった人で、とりあえず現場に出て現場に慣れることが一番みたいな人だったので。

 

琴山 アシスタント経験されない方と経験される方、どちらが多いとかはあるんですか?

 

山田 多分経験している人の方が多いと思います。一応私も師匠みたいな人がいたのでアシスタント?みたいな感じだったんですけど、例えばメイクさんに直属で付いてっていう形だと大体3年とかアシスタントして独立するっていう感じだと思います。でも早い人は1年半とかなのかな。私はほとんどアシスタントを経験していなかったので、そのメイクさんによって違うというか、バラバラだと思います。

 

琴山 山田さん的にはどっちの方が良いと思われますか?

 

山田 3年ぐらいヘアメイクをやったタイミングで、めっちゃアシスタントをやりたくなったんですよ。普通に1人で現場に行ってヘアメイクしてってやっていたんですけど、ある時から自分の伸びしろに限界を感じて、結局誰かのアシスタントに付くことはあんまりなかったんですけど、いろんな人のやり方を見たくなった時期があって。だからアシスタントに付かなくてももちろん良いと思うんですけど、私はちょっとでも付けば良かったのかなと思う時もあります。

   やっぱりアシスタントに付くと繋がりが増えるというか、ネットワークはめちゃめちゃ広がると思います。特に雑誌についているメイクさんに付くと雑誌に超強くなるので、そういうメリットもたくさんあります。

 

琴山 各々にメリットがあって難しいですね。

 

山田 めっちゃ難しいと思います。

 

琴山 ありがとうございます。

 

甲斐 まだまだ聞きたいことがたくさんあるのですが、今回はここで終わりにしたいと思います。

 

メンバー一同 ありがとうございました。

今回のメンバーインタビューでは、ヘアメイクという職業のやりがいと難しさ、アイドルライブにおける実践的なヘアメイクのコツ、そして最先端ヘアメイクの情報収集術まで伺った。ヘアメイクの流行を素早く先取りしつつ、一方で目の前の女性の個性に合わせて臨機応変に良さを引き立たせて行く。運営インタビューではさらに、ヘアメイクになるルート、アート作品とライブにおけるヘアメイクの意識の違い、現場でのコミュニケーション術などに迫っていく。

 

Special Interview ヘアメイク 山田季紗さん 〜運営インタビュー編〜

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