Special Interview
照明 エンドウレイさん
メンバーインタビュー編
舞台装飾とともに舞台を視覚的・空間的に彩り、刻々と楽曲に合わせて変化するという意味ではVJと並び時間的な表現でもある照明。ファンにとっても直接的に感じられる「分かりやすい」ステージ演出である一方、そのオペレーションや照明を生み出す際の思考はファンからは見えにくい。今回は、RAYとは4th ワンマン「PRISM」が初の関わりながら、コンセプトを反映した照明の表現や特殊演出を存分に実現してくれたエンドウレイさんに、RAYメンバーがインタビューを行った。
■照明を始めたのは高校2年生、進学は音響の専門学校
内山結愛(以下内山) 5月8日に行われる3周年ワンマンライブ「works」ではRAYの活動を支えてくださる方々にフィーチャーしています。今回は照明のエンドウさんをインタビューしたいと思います。よろしくお願いします。
メンバー一同 よろしくお願いします。
エンドウレイ(以下エンドウ) よろしくお願いします。
琴山しずく(以下琴山) まず照明さんとはどういうお仕事でしょうか?
エンドウ ライブにおいて照明は視覚的な部分で欠かせないと自分では思っていて、明かりを照らすことでメンバーさんを明るくしたり、お客さんに明かりを見せるという仕事になるかなと思います。1曲目、2曲目と続く中で雰囲気を変えるのにも照明がいるなとは思いますし、盛り上がる曲やちょっとしっとりさせたい曲がある中で、見た目で変化をつける仕事かなと思います。
甲斐莉乃(以下甲斐) 現場やアーティストさんによってライブの尺が長かったり短かったりすると思うんですけど、最後までずっと一人で照明を担当するものなんですか?
エンドウ 完全に長尺のアイドル対バンイベントとかだと2人とか3人でやることもあったりします。そのうちの一人が大部分の明かりを作っておいて、交代してくれる人に「ここにこの明かりが入っているよ」という説明をしてから交代するという。アイドルさんの長尺イベントとかだと結構よくそうやっていますね。
甲斐 ワンマンライブとか単独でやるアーティストさんの照明は一人で行う感じですか?
エンドウ そうですね。一人でやっていますね。
甲斐 そうなんですね。対バンやワンマンで照明をされているとのことですが、具体的にRAYとはどう関わってくださっているのでしょうか?
エンドウ 私は1月の恵比寿LIQUIDROOMでのワンマン(注:RAY 4thワンマン「PRISM」)が初めましてで。対バンとかでも私はお見かけしたことがなくて完全に初めましての状態で、5月にあるワンマンが2回目になっちゃいます。
メンバー一同 よろしくお願いします。
エンドウ RAYさんに関わっているテクニカル(注:技術系のスタッフ陣)の中で言ったら結構新参者ではあるんですが、頑張っていこうかなと思います。
甲斐 ありがとうございます。
琴山 どういう繋がりで「PRISM」から照明さんとして参加してくださったんですか?
エンドウ 今回は事務所の方ではなくて、元々繋がりがあったライブを作っている制作(注:運営を含む演者側とスタッフ陣を繋いでくれる役職。その他多彩な仕事内容を持つ)の方から「こういうアーティストがいるんだけどやってみない?」という話をいただいて、やらせていただきました。
甲斐 ではそこからRAYを知ってくださったんですね。
エンドウ はい。
甲斐 照明の仕事を経験的には何年ぐらいやってらっしゃるんですか。
エンドウ 経験的には、私はもう高校生の時から照明っていう仕事……仕事まではいかないけど、照明をすることは高校2年生ぐらいの時からやり始めていて。地方のライブハウスでよくあるんですが、バンドを元々していて、よく出演しているライブハウスから「バイトをちょっとやってみない?」という話があって。ドリンクとか受け付けとかから始めて、学生さんのサークルイベントとかで照明をやり始めるっていうのが、結構ライブハウスの中であるあるなんです。私も同じように高校生の時にライブハウスで働いて、照明をちょっとやってみて、ちょっと楽しいなぁっていうのはあって。
それで上京して専門学校に入り、その専門学校は音響の専門学校だったんですけど、そこに2年間行っている間にもいろんな繋がりがあって、照明をやる風になっちゃってて。なっちゃっててっていう言い方もおかしいんですけど(笑)、いろんな繋がりで結局照明をやると決めたのは、専門学校2年生ぐらいの時です。そこから、学校を卒業して4、5年くらいはずっと照明をやっています。
■照明の難しさとやりがい
内山 卒業してからの照明の技術とかっていうのは、もう独学でやるしかないんですか?
エンドウ もう独学で完全にやるしかなくて。ちょうど卒業する直前ぐらいのタイミングで、先輩というか、師匠というわけでもないけど、年上の照明さんと出会う機会があって。その人にいろんな現場に連れられて、でも私は照明卓でオペレートするっていうことしか出来なかったので、本当に何もかも分からない状態で。照明さんって大きいライブハウスとかに行くと仕込み(注:本番を迎えるための用意全般を指す舞台用語)をするところから始めなきゃいけなくて、行ってパッと卓を上げたら照明が点くわけではないんです。でも仕込みをする一からが全く分からなくて、現場に行って勉強して現場で覚えるみたいなことをずっとしていました。
琴山 専門学校で音響を習われていて、でもその卒業直前で照明にしようと決めたというお話でしたが、そのまま音響をやりたいなとはあまり思われなかったんですか?
エンドウ 音響も楽しいし、知識としてはすごいためになることはめちゃめちゃあったんですけど、専門学校2年間の間に照明をやる機会の方がちょっと多かったんですよね。現場に行ってオペレーションをする機会は照明の方が多くて、音響より照明の方が自分に合っているんじゃないかなっていうのを考え出してしまって、それで「やっぱり照明にしようかな」って結構軽く考えちゃって(笑)。専門学校の同級生は会社に入ることが多かったんですけど、私は卒業しても会社にも入らずに、そのままフリーランスでやってしまったらできちゃった、というのが正直あって(笑)。それで今に至るって感じですね。
内山 先ほども仕込みが難しかったというお話がありましたが、照明という仕事の難しさだったり、やりがいを教えていただきたいです。
エンドウ 仕込みとかは覚えれば何とかできちゃうというか、知識として覚えて体を動かしてみたら、結局もう動けちゃうようにはなるんです。なので仕込みとかバラし(注:本番後の撤収作業を指す舞台用語)とか動く方に関してはそんなに難しくないんですけど、オペレート、照明を考えるっていう方は、やっぱりいつまで経っても難しいなあと思って。自分が考えている明かりを物として出す、視覚的に見せられるようなものにするっていうのは、いつまで経っても「絶対これが正解」っていうのはないし、「これで大丈夫かな?」っていう不安はちょっといつもありますね。
でもやっぱりその中で、ワンマン公演とかをめちゃめちゃ考えて、時間を使って考えてやってみて、その後の達成感はすごくあります。結構もう、精神力を使いきっちゃうぐらいしんどい時もあるんですけど、それ以上の達成感がめちゃめちゃありますね。
内山 ファンの方からも実際に目に見える情報として照明があるので、私たち自身としても一緒にライブを作っている感覚みたいなのは、結構あるなって。
エンドウ そうですね。
■照明卓の知識と現場での対応力
琴山 他の照明さんと比べて、エンドウさん自身のアピールポイントだったり、強みなどを教えていただきたいです。
エンドウ なんか自分で「私ここすごい」って言うのはちょっと恥ずかしいんですけど(笑)、自分の中で照明卓の知識量については、元々これだけは頑張ろうってずっと思っています。よく照明さんの中で使う、あるメーカーのある照明卓があるんですけど、デジタルのものになっているので突き詰めれば突き詰めるほど結構いろんなことが出来るんですよ。いろんなことが出来るけど、「この組み合わせで」みたいなコマンドがいっぱいあって。
内山 ゲームみたいですね(笑)。
エンドウ 裏コマンドみたいなのも結構あるので、そういうのを勉強して知識として蓄えるっていうのは、本当に照明を始めたての頃からずっと意識するようにしていて。仕込みができないっていう時代があったので、仕込みがそんなに出来ない自分を現場に呼んでもらえるようにするにはどこか強みがないといけないなと思って。じゃあ「卓がトラブりました」とか、「照明が何故かつきません」とか、そういう技術的なところは絶対に勉強しようと思って、そこは勉強してきたなとは思います。
あとは、現場に行って照明を作っていると、ワンマンはやっぱりみんなこだわりたいし、アーティストや運営の方から「これやっぱりこうしてほしい」といった要望が絶対に出てくると思うんですよ。そういうところでパッと言われて「じゃあこれはどうですか?」と返せる対応力はここ数年ちょっと磨けたかなと。
内山 何がきっかけだったんですか?
エンドウ やっぱりリハって結構限られた時間じゃないですか?その上でみんな、いろんなところをちゃんとリハーサルとして見ていきたいってなったら、照明にそんなに時間を掛けられないなあっていうのはあって。私は現場で「他のセクションの方に迷惑をかけない」を絶対的に念頭に置いていて。「照明の仕込みが押しちゃったから」とかも嫌だったので、リハで「照明をこう変えたい」っていう要望があったら、「じゃあこれはどうですか?これはどうですか?」っていう案をすぐに出せた方がみんな丸く収まるなと。そういう点は頑張ろうと思っていますね。
■ワンマンと対バンでの照明演出の違い
甲斐 音楽を照明で表現することは照明演出のキモになると思うんですけど、その中でエンドウさんが、音楽のリズムだったり歌詞だったり、もしくは直感的な曲のイメージをどう捉えて照明に反映しているのかを知りたいです。
エンドウ 私は結構直感的な部分が多いです。ただワンマンで事前準備の時間がいっぱいありますっていう時は直感だけじゃない日も多くて、事前に曲をもらい、踊っているところの動画をもらって、フォーメンションや振りを見たり。あとは歌詞を聞いたりとか曲名から意識したりとか、そこからいろいろ連想して。やっぱりブルーっていう名前が付いている曲名ならブルー系にはするし、「このAメロはこういう感じだったけど、 Bメロはちょっと雰囲気が変わるから、ちょっとこういう風にしよう」というように、結構直感的ではあるけど一個一個セクションごとに吟味して考えたりはしますね。ワンマンで時間がある時だけは、そこまで出来ます。
ただ、長尺のアイドル対バンで事前に資料がない場合は、どんどん「次のセトリです、次のセトリです」みたいな感じで楽曲が来ます。そういう時、照明要望が「お任せ」のグループについては「曲名がこれ」って思ったら、もうその曲名で色を連想させて即座に色を変えていつもやっていますね。ただやっぱり一音目、曲が流れた瞬間に「うおーこの色だって思ったけど、この曲調は違う!」となったりするとこっちも「あー」って焦ったりはたまにありますね(笑)。
(メンバー一同笑い)
内山 そういう時は、結構思いっきりバキッっと変えますか?
エンドウ 私は反射的にバキッと変えますね。そのために、対バンでその可能性がある日はすぐその色のページに飛べる(注:色ごとに分かれたフォルダに移動する)ように準備をしています。なので、対バンイベントにも慣れてはいるのでパッと対応はするんですけど、そのようなイベントなどでは直感的なところですぐ決めるっていうことが多いですね。
■明かりを照らすための具体的なオペレーション、色に関して必要な暗記
内山 初歩的な質問なんですけど、どうやって照明を変えているのか?ボタンとかなんですか?
エンドウ 照明を点けるにはフェーダーとボタンがあって。「このフェーダーに対してこのボタン」という感じなんですけど、今点けている明かりに対してすぐ色を変えられるかと言ったらそうじゃないんです。今もし一つのフェーダーを上げていてその明かりが点いていますという状態の時には、それ専用で作っている明かりになるので、そこからまた色を変えたいとか速さを変えたいとかがあるとまた全部作り直さなきゃいけないので。
琴山 色を作るっていうのはどういうことなんですか?
エンドウ 例えばLED PARというよく使われるLEDの照明だったら、あれは赤と緑と青と白の4色で基本的に構成されていて、黄色を出すとなったら赤が100%で緑が80%ぐらい、っていう。
甲斐 絵の具みたいな。
エンドウ そうですね。光の三原色を組み合わせて作っています。パレットというすぐにその色を指定できるものもあるんですけど、赤何パーセントとか、そういうのを組み合わせて結構作っています。
琴山 じゃあ大体、「赤が何パーセント、黄色が何パーセントでこの色になる」みたいなのは把握されてるっていうことですか?
エンドウ 完全に覚えてますね。
メンバー一同 すごい!
エンドウ 機材の個体差とかは絶対あるので、なんとなく作って当日修正とかはあるんですけど。でも多分照明さんは「赤が何パーセントで青がパーセントだったらこの色」みたいなのはすぐに出てくると思います。
甲斐 じゃあ(赤緑青白に対応した)4つのフェーダーがあって、それを上げ下げしてるってことになるんですか?
エンドウ フェーダーに明かりを作ったものを入れるという感じなので、そのフェーダーに既に入っているという感じですね。でもLEDだったらそうなんですけど、一般灯体の場合は違っています。一般灯体というのは熱いやつ、LIQUIDROOMもほとんど全部そうだったんですけど、普通のライブハウスにもある熱くなる明かりのことで、あれは基本的に暖色系のよくある色しか出ないので、色のフィルターを入れてその色にします。
フィルターには何百種類もあって、緑の中でも何種類かあったりして、その中で「今日のこのイベントはこういう色が合うな」とか緑の中でも選んだり、青の中でも「ちょっと薄めの青を多めにしよう」とか選んで使っていますね。
琴山 知識量がもう、すごすぎますよね。
エンドウ 色のフィルターも大きく分けて3つの会社のものがあり、その中でも色が全部違うくて、「日本の色のフィルターの会社だったら何番台が何色」みたいなのがあるんです。その基本的なものについては、照明さんであれば結構覚えている人は多いですよね。
内山 すごい。こんなに照明さんが暗記のお仕事だと思わなくて、ビックリです。
■「照明を見せるというより、照明が雰囲気の一部になるようにしたい」
内山 照明といっても、アイドルとかバンドとか、イベントによって結構変わると思うんですけど、アイドルライブの特徴的な照明というのはあるんですか?
エンドウ アイドルライブだと、やっぱり舞台とかバンドのライブとは違って、振付があったりとか、自由自在に動かれるというか、そういうのがあるので。私は振り付けを見ることは結構あって、すごく分かりやすく言ったら、光に手を伸ばしているような振りがあったら「その光がそこにある」ような演出をしたいなとも思ったりしますし。これは舞台とも通じるんですけど、夜の曲があるとしたら、最初の一番は完全に真っ暗というか暗めの青にして、終わりにかけて青にちょっと紫を足すとかオレンジを足して、だんだん朝に向かっていくような感じにしたりします。アイドルさんでは振付を見てみることが(特徴として)一番ありますね。
内山 RAYのライブや曲の世界観は結構簡単じゃないというか、楽しいっていうだけじゃない曲がすごく多いと思うんですけど、歌詞で愛や切なさが表現されている場合、照明では何色が多くなるというのはありますか?ご自身のレパートリーの中で。
エンドウ たとえば愛だったら、曲調が結構早めの曲というかロック調だったらやっぱり赤色に寄せたりするんですけど、逆になんとなく曲のイメージでふんわりしていたら、ちょっとピンク寄りにしちゃいます。切ないだったら、本当に青系にしちゃうか、細かい話なんですけど、青に白を混ぜると何とも言えない色になるんですよ。水色でもない薄い青って感じになるので、そういう「ちょっと薄い何色」みたいなのを使うことが多いですね。
内山 ありがとうございます。RAYの曲はすごい難しいというか独特というか、「Blue Monday」みたいにタイトルに色が入っている曲だったら分かりやすいと思うんですけど、「尊しあなたのすべてを」とか、厳かというか神々しい曲だったりとかが割と多いなと思っていて。そういう曲は絶対難しい……どこから読みとってどういう準備をしているんだろうと思って。
エンドウ そうですね。確かに初めてやった時も、ちょっと難しいなとは思って(笑)。バンドとか、よくお客さんに煽るようなアーティストさんとは違って、やっぱりその曲の世界観があって、メンバーさんの動きがあり、それに合わせた私があるので。私はお客さんに対して照明を見せるというよりは、お客さんが観ていて照明がその雰囲気の一部になるような感じにしたいなと思っていて。なのでお客さんに向けるというよりは、明かりを壁に当ててそんな雰囲気にしたり、メンバーさんに明かりを当ててメンバーに色が映るようにしたりする、そういう風なことを意識していたかなと思います。
内山 ありがとうございます。
■照明に要望をどう伝えれば良いか
甲斐 お話を聞いていてすごく作品のようだなと思って。照明だけでもいろんなパターンの表現方法があるんだなっていうのを今知られたんですけど、先ほど言っていたように愛とか切なさとか、そういったものを色で表現するのもすごく面白いなあと思って。結構ライブって、RAYのライブもそうなんですけど、感情や魂というか、熱量やそういったものをぶつける場でもあるなと感じているので、メンバーの雰囲気だったり世界観だったり、感情を感じ取って色にしてくれているのがすごく嬉しいなあと思いました。
そんな中で、例えば生誕ライブとか、自分が演出の構成を考えるライブというのがありまして、そういう時には照明にも結構こだわりたいなと思っていて。毎回照明さんに「この曲はこういう色味が良い」という指定やお願いをしているんですけど、結構抽象的になってしまって。自分の場合は明るめとか暗めとか、「この曲は前半がピンクで後半につれ暗くしてほしい」とか、そういう要望をしているんですけど、一般的にはどういう風に要望をお伝えするのかをすごく気になっています。抽象的な感じよりも、もっとはっきり「こういうイメージ」というのを伝えられた方が分かりやすかったりしますかね?
エンドウ 要望している方に「絶対こういう感じにして欲しい」っていうものがあるのであれば、やっぱり詳しく言ってもらったほうがこっちも感じ取りやすいっていうのはあります。特に初めましての照明さんに対しては、やっぱりそういうことをした方が自分の思った感じになるというか、「Aメロが終わってBメロ前に、ここスポット当ててください」とか、細かい指示があった方が具体的に自分が思っている通りになりやすいとは思います。
ただある程度「この人ならやってくれる」みたいな方がもしいるのであれば、もう色だけお伝えして「後はお任せで大丈夫です」と言ったりする方も全然いらっしゃいますし。
あとは、例えばA4の紙にズラッて要望を書かれると「うっ」となってしまう時もやっぱりあるので(笑)。細かく伝えたいのであれば、全曲の要望が1枚のA4にバーッて書かれているよりは、歌詞も載っていて、それに合わせて「ここはこうしてください」みたいな指示が書いてあるものを、1曲1ページぐらいでもらえた方が助かるっていう正直な意見はあります。みんな、そんな(ライブ中の)暗闇の中で目が良くないので(笑)。
ただ細かく伝えたいっていう気持ちもすごく分かるので、細かくお伝えしたいというのであれば、全然細かく言ってもらっても大丈夫かなとは思います。
甲斐 ありがとうございます。
■「PRISM」の特殊演出について
琴山 「PRISM」の際に私たちが朗読をして、いろんな方向に歩く演出(注)があったかと思うんですが、その時に照明さんが歩く私たちを追って照らしてくださったじゃないですか。ああいうのってどういう機材でされているのかがすごく気になります。
(注:ワンマンライブ「PRISM」では各メンバーがRAYの各楽曲の歌詞の一部を朗読しつつ、ステージ上を様々な方向に同時に歩くパフォーマンス(M6.プリズム)が行われた。縦横無尽にステージ上を歩くメンバーを、スポット的な照明が追って照らし続けた。)
エンドウ あれは苦肉の策で(笑)。苦肉の策というか、もうどうしようっていっぱい考えてやったやつで、ライブでもよく見ると思うんですがムービングスポットという照明があります。これは本来シュポッと結構細いビームが出るものなんですが、フロストというちょっとぼかすエフェクトを使って、「この1の位置から2の位置にみんなこうやって行くから、じゃあこの機材からこの機材に」っていうのをめちゃめちゃ考えて作りました。
内山 その節は本当にありがとうございました(笑)。
琴山 それって、4人いるので4個の光があるじゃないですか。それをお一人で操作されるんですか?
エンドウ 一人で操作していました。逆に一人でしか出来ないので、そのために皆さんの位置や「この位置からこのルートで行きます」みたいなのを結構きっちり決めさせていただいて、その中でやっと出来たっていう感じにはなりますね。ムービングを皆さんの歩幅に合わせて動かしていくんですが、その時だけフェーダーの動きに合わせてムービングが動く仕様にしていたので、こうやって(ゆっくりフェーダーを指でズラしていく仕草)、ステージを見ながらこうやってっていう感じでやっていました。結構、アナログな感じだったんですけど。
琴山 やっぱりライブ一つ一つ、凄まじい集中力を持たないと出来ないお仕事ですよね。
エンドウ そうですね。多分集中力はめちゃめちゃにいると思います。集中力が切れちゃったら、もう結構何も出来なくなっちゃうような仕事かなとは思うので。あの日も集中力を確かずっと使っていて。どの仕事でもやっぱりそうなんですけど、そういうワンマンで集中力を使ってという日は、しっかりその夜落ちるように死ぬ感じにはなっちゃいますね(笑)。
内山 5月8日の前はお互いにたっぷり寝て、一緒にライブを作っていけたらと思っています。当日もよろしくお願いします。
メンバー一同 よろしくお願いします。
内山 インタビューありがとうございました。照明のエンドウさんでした。
メンバー一同 ありがとうございました。
エンドウ ありがとうございました。
今回のメンバーインタビューでは、エンドウさんのちょっと特殊な経歴から、楽曲のイメージを照明に落とし込む思考法、照明という仕事が持っている「暗記」の側面など、幅広く伺った。エンドウさんが強みとする現場での対応力、曲の世界観とメンバーを活かすスタンスは、演者側としてとても心強く、ありがたい。運営インタビューでは「仕込み」や「打ち込み」といった仕事の具体的な内容、照明にまつわるコミュニケーション、舞台表現における照明の位置付けにより深く迫る。