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Special Interview
音響 大畑“gumi”修平さん
メンバーインタビュー編

現場における楽曲パフォーマンスにおいて、音響面に最も関与し、様々な音の調整・管理を行っているPA(Public Addressの略・公衆拡声)。しかしPAはその存在の圧倒的な重要性にも関わらず、「ただ音源を流す」以上にどのような役割がありどのような調整を行っているのか、あまり知られていない。今回はRAYのワンマンに何度も関わり、普段の対バンでもお世話になっている音響 大畑“gumi”修平さん(グミさん)にメンバーがインタビューを行った。メンバーとの信頼関係が音作りにどのように関わっているのか、その機微を知ることができる。

■PAの大きな2つの仕事、正解のない「音作り」の難しさ

琴山しずく(以下琴山) 5月8日のRAY 3周年ワンマン「works」ではRAYのライブ活動を支えてくださっている、周囲の方々にフィーチャーします。ということで、今回はいつもRAYの音響でお世話になっているグミさんにインタビューをさせていただきます。

 

グミさん(以下グミ) よろしくお願いします。

 

メンバー一同 よろしくお願いします。

 

琴山 グミさんには日々の対バンイベントのPA(public address=公衆拡声。いわゆる音響)、RAY 3rdワンマン「moment」、4thワンマン「PRISM」でのPAを担当していただいています。

 

甲斐莉乃(以下甲斐) その中でPAさん、音響というお仕事は、どういうお仕事をされるのでしょうか?

 

グミ そうですね、大きく分けると2つあって、1つは演者さん、つまりステージにいる人たちのパフォーマンスをより良くするための環境をつくること。もう1つが会場にいる見ている人達(お客さん)に対して、演者さんのパフォーマンスを適切に届けること。この2つになるかなと思います。ただその2つだけっていうと、ちょっと僕自身は違うかなと思ってて。パフォーマンスしやすいっていうのは技術的な面もそうなんですけど、それだけじゃなくて、たとえば精神的なところのケアっていうのも大事かなと思っているので、そういうところも気をつけてやっていますね。

 

甲斐 ありがとうございます。

 

内山結愛(以下内山) では具体的にRAYとどのように関わってくださっているかを教えてください。

 

グミ 多分、最初にRAYの音響をやったのは、2019年5月の渋谷WWW、コバケンさんが主催されているエクストロメ!!の、nuance、クロスノエシス、tipToe.、RAYの対バンですね。

 

甲斐 ブルマン(Blue Monday)の動画がyoutubeに上がってる日かもしれない。

(参考: https://www.youtube.com/watch?v=estHGWEuRBU

※実際は2019/11/5のライブで、同じく渋谷WWWですがグミさんが初めてRAYの音響を行った5月のライブとは別のライブとなります。

グミ それが一番最初で。ただもっと前で言うと、実は5月1日のお披露目の日のチェルシーホテルに行ってて。nuanceが出ていてそれに絡んでちょっと寄っただけなので、全然誰とも話してないんだけど。だから結構最初の頃からRAYには関わってはいるかな?と、なんか改めて思い出した。そういえばそこからだと思って。その後にエクストロメ!!もだし、いろんなところでイベントだったり、なんだかんだ結構やらせてもらってるんだなっていうのは思いました。

 

内山 ワンマンではもうゲネから入っていただいて。

 

グミ 確かにそうですね。ちなみにめちゃくちゃ余談なんですけど、5月1日がRAYのお披露目じゃないですか。僕、誕生日5月1日なんです。RAYと誕生日が一緒(笑)。

 

内山 RAYと一緒に産まれましたね。

 

グミ 年齢は全然違うからね(笑)。

 

琴山 続いてPAさんっていう仕事の難しさだったり、やりがいなどを教えていただきたいです。

 

グミ 難しさからお話しすると、音って形がないじゃないですか。目に見えなくて、評価がすごいしづらいものだと思っていて。人によって見え方とか評価の仕方が違うので、すごく抽象的になってしまうところが一番難しいところかなと思っていて。究極音を出すだけなら誰にも出来るし、僕じゃなきゃいけないということもないし。どれだけ「これがいいだろう」と思ってやっても、例えば会場に100人いたら100人が良いと感じることは絶対になくて。それはまぁ演者さんサイドも一緒で。中には「この人と一緒にやってるけど、なんでこの人なんだろうな」って思っている人も、多分いるんだろうなと。正解がないっていうところを常に追求していかなきゃいけないのがすごい難しいかなと思っています。

   一方でやりがいは、さっきの仕事の役割みたいな話にも繋がるんですけど、精神的なものも含めて、一緒に作り上げていくみたいなところは、非常に面白いなと思っていて。なんだろう?ワンマンをみんなで成功させたぞみたいなのは、裏方ではあるんだけど、自分がいてよかったなって思えるところがありますね…一緒に作れるところはやっぱり一番のやりがいというか、それがなかったら多分やれないかなと。この仕事は誰にも評価されないので。

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■アイドルPAの特殊性、「安心」の重要性

甲斐 ありがとうございます。アイドルPAはバンドPAとは全然コツというか、難しさが違うと聞くんですけど、アイドルPA特有の難しさがあれば教えてください。

 

グミ バンドの場合は楽器の演奏と歌、全部生ものでできてるんですけど、アイドルさんの場合は基本的にオケを使う。オケって一定じゃないですか。その日のブレっていうのは声の「出来」しかない。僕の考えなんですけど、毎回同じものを見せられたらちょっと面白くないかなと思っていて。そういう意味では「ムラ」があってしかるべきだと思ってるんですが、そういうのはやっぱり作りづらいんですよね。声だけで作るっていうのと、全体で作るっていうところが一番難しいかなって。あとは世界観をどうやって伝えるかみたいなところも。メンバーさんの声だけで表現しなきゃいけないんで。

 

内山 一人ひとりの声質とかって、長く付き合っていかないと上手く掴めなかったりしますよね。SNSの発信とか、コンセプトとか、アイドルさんごとにあると思うんですけど、そういうのも結構見たりするんですかね。

 

グミ そうですね。基本的には関わっているグループのメンバーさんのSNSは常に見るようにしてたり。あとは運営さんの公式アカウントとかも基本的に見てますね。そこで、こういう出来事があったみたいだから、こういう性格なのかな?と考えるっていうのを意識するようにしています。そしてさっきお話しした「精神的に安心できる環境づくり」の中の雑談の一つとして、この前こんなこと言ってましたね、みたいな話をしてみるとか。ネタとしては常に持っておくようにして。そのために見てますね。

 

内山 結構リハとかで、初期に比べたらもうすごくRAYのことを理解してくれてるから阿吽の呼吸でできてるというか、「声のバランス大丈夫だよね?」みたいに聞いてくださる時とかも、完璧な状態で用意されてて何も言うことが無いみたいな(笑)最近はそれが増えてきていて、うまくマッチしてきてる。

 

グミ そう言っていただけたら……やっと、やっとって感じですね。これだけ長く関わっていて、やっと何となくこうかな、みたいなの。多分そこは、長くやってくるとあの人だから大丈夫だろうみたいな。繰り返しになっちゃうんですけど、その精神的なところ、安心みたいなのがやっぱり大きくて。音って、さっきも話した通り形が無いんで精神的なところで結構感じ方が変わっちゃうんですよ。例えば不安な時って音楽聞きたくなくなっちゃったりするじゃないですか。逆に楽しい時って楽しい音楽聴きたくなっちゃう。(良い例えではないけど)例えば家の窓を開けっ放しで出てきちゃったかも、雨降りそうだな…みたいなのが気になっていると、音が聞こえてこなかったりとかがあるので。やっぱり精神的な安定…という言い方が正しいのかわからないですけども、精神的なものっていうのは大きいかなと思うので、そういった関係になっていれば嬉しいなあと思います。

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■「爆音」は大きければいいわけではない?

甲斐 いろんなアイドルさんとお仕事をなさる中で、ひとりひとりの個性や歌声、マインド面も含め、SNSをチェックしたりしているというお話がありましたが、グループという単位で見ても、全体として様々な特色のあるグループさんが居ると思います。その中でもRAYは結構音楽ジャンルが珍しく、シューゲイザー、IDM(intelligent dance music)、「叫ばない激情ハードコア」など、ちょっと変わった音楽ジャンルをやってて。自分が少し気になったのが、シューゲイザーっていうジャンルのオケ作りをする時とか、音の壁とか音圧が特徴となるのでRAYからは「爆音で」と毎回依頼してると思うんですけど、なんか爆音も限界があると思ってて、その限界を超えたらどうなるのかになりました。

 

グミ 面白い質問で難しい質問を(笑)。爆音って、これは僕個人的な考え方なんですけど、ライブ会場で聞いてる音である以上、日常では聞けない体験をしてもらいたいとか、そういったところで作ってます。じゃあ、それってただ大きければいいかっていうと、またちょっと違うかなと思ってて。例えば1時間とか2時間のワンマンをずっとでかい音を聞かされると聞いてる側も疲れてきちゃうし、平坦に聞こえてしまう。さっき話したような世界観っていうものがあって、山谷あってしかるべきだと思っているので、そういうのを表現するためには、例えば「この曲はちょっと小さめにしようか?」、逆に「この曲はでっかくしよう」という調整もします。あとただでかいだけじゃなくて、耳に優しいというか、音に包まれるような感覚みたいなところをすごく気を付けてやっていますね。だから耳が痛くなるような、ギャーッていう、ギターの音とかが割とそういう音してるんだけど、そこと音圧感のバランスをうまく取るようにしています。そこは結構気にはしているところです。

 

甲斐 ありがとうございます。

■音で感じるメンバーの調子

内山 次の質問です。数々のアイドルPAを担当されていますが、その中でRAYでのPAの難しさや気をつけていることがあれば教えてください。

 

グミ 今の話と繋がってくるかなとは思うんですけど、RAYの音楽性、シューゲイザーみたいなところで言うと、その声の儚さと、後ろのバンドサウンドとか、ギターの歪んだ音とかとの共存が一番難しいところ。その中でもやっぱり最大限に大きくしようと思うと、いろんなところでバランス取っていかないと実はできなくて。

 

内山 イヤモニの導入で、そこらへんが結構やりやすくなったとかはPAさん側でもあるんですか。

 

グミ そこはありますね。イヤモニになると、ウェッジと呼ばれるステージ上のフロアモニターを鳴らさないので、ハウリングが起きづらくなります。その分音量を出しやすくなったりとか、多分メンバーさん自身も聞こえやすくなることで声が出しやすくなる。逆に聞こえてない環境だと、どれだけ声を出しても出てる気がしなくなって声を出すのに過度な力が入ってしまう。そういうことがなくなるので、バランスがとりやすくなる。やりやすくなるかなと思う。

 

内山 先ほど曲によって音の出し方を変えてるっておっしゃったんですけど、曲ってやっぱ何回も聞かないと覚えられないというか、どういう曲だったかを忘れちゃいがちだと思うんですけど。しかも担当していらっしゃるのはRAYだけじゃないじゃないですか。だから、他のアイドルグループさんの音楽も含め、結構もう日常的に聞いてるんですか?

 

グミ これ、他のグループのも含めて、ほとんど音楽聞かないんですよ。

 

(メンバー一同驚き)

 

グミ 全部会場でやって覚えてて。

 

(メンバー一同再び驚き)

 

グミ 現場で聞いて、そう言えばこういうのあったなとかっていうのやるんですけど。あ、でも、音楽全く聞かないっていうのはちょっと語弊があるな…その日やったライブのライン録音(ミキサー上でミキシングされた音を録ったもの。いわゆる2mixと呼ばれる。)は3日くらい聞きます。

 

内山 めっちゃ聴いてますよ。それは(笑)。

 

グミ どうだったかな、っていうのを振り返るために聞いてるんですけど、これを何回聞かなきゃ、とかはあんまり思ってない。例えばサブスクで聴くみたいな、何か音源が解禁になったっていう情報を見て聞いてみようかなっていうのはあって。一応一通り聴くんだけど、それを日常的、恒常的に聞いているかというと、そうではない。僕は音楽がそんなに好きじゃないのかもしれないですね。

 

琴山 ライブのライン録音をライブ終わったあと3日間くらい聴くってなったら、アイドル以外の普通の曲や普通の音楽とかも一切聞かない?

 

グミ ほぼ聞いてないですね。まあ、他の人たち(PA)がどれくらいなのか全然知らないのですが。

 

内山 私たちもライブ動画を毎回記録してるんですけど、それをパフォーマンスを良くしていくためにメンバーで見返すっていう作業があります。なんかそれと似たようなものがあるなって。

 

グミ そうですね。例えば「今日この曲のときにこういう作り方したんだけど、それって正しかったのかな」を、もう一回見直すためなので、そういう部分では同じ感覚かなと。

 

内山 お互いにこうよくしていこう、よくしていこうで、毎回のライブが出来上がってるっていうのが、ちょっと今すごいいい気持ち(笑)。頑張ろうって思いました。

 

グミ やっぱり皆さんが頑張ってるからこっちもより良くしていかなきゃいけないっていう感覚なので。僕らってミキサーを触っている時に、歌ってる声の入り方とかで、今日こういう感じなんだろうなとか実は分かって。さっき話したその精神的な機微もそうだし、どういう練習してきたんだなとかっていうのは、すごい分かる。だからこっちもちゃんと応えなきゃなって思う部分もあるし、そういう意味では相乗効果が出てたらいいな、嬉しいなあと思いますね。

 

内山 ありがとうございます。

■出力毎による音作りの違い

琴山 それでは続いての質問をさせていただきます。今動画の画面上に出ている図(下図参照)ですが、このピンク部分で出力される音にどんな違いがあるのかを知りたいです。また、この図の中にあるエアーマイクというものが何かも説明していただけるとありがたいです。

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グミ この図は配信ありきっていうか、配信と会場のハイブリッドなライブを想定しているんだと思うんですけど。まずエアーマイクの役割についてお話をします。エアーマイクっていうのは、その場の空気感、例えば拍手だったりとか、まあ今(コロナ禍で)歓声が出せないのでちょっと難しいんですけど、雰囲気を拾うマイクです。さっきも話に出てきた「ライン」と呼ばれるミキサーからの信号だけだとちょっと生々しすぎるので、その会場で聴いているような感覚により近づけるためのマイクと思ってもらえるといいかなと。そういうものがあって配信の音を作るようになってます。

   次に、メンバーさんが聴くイヤモニと言われる耳の中の音と、フロアーに置いてあるモニタースピーカー、そしてお客さんが聴いている音を出すメインスピーカーがあります。PCっていうのは、配信先の人たちが聴いている音で。一個ずつお話をしていきますね。

   イヤモニはメンバーさんがパフォーマンスをしやすいようにするもので、モニタースピーカーと役割は割と近いかなと。ただ、イヤモニつけてるとわかると思うんですけど、かなり閉塞感があって外の音がまったく聞こえなくなります。それってちょっと普通じゃないっていうか、自然じゃない環境だと思うんですよ。で、それがより自然になった方が多分パフォーマンスしやすいと思うので、そういう音の作り方を気にしています。後は耳にダイレクトに聞こえてしまうので、あんまり音量を上げちゃうのは聴力保護の点からよくなかったりするので…メジャーの人とかで片耳で聴いてる人とかいると思うんですけど、実はよくなくて。片耳だけ負荷がかかって付けてる側の耳だけ悪くなってしまうので。閉塞感が嫌とか外の音が聞きたいから外したい気持ちもわかるんですけど、なるべくそういうのはやめた方がいいよ、みたいな話もしたりしますね。モニタースピーカーと比較すると、イヤモニから聞こえる音って、リバーブ感とか全然なかったりするじゃないですか。だからイヤモニの時にはあえてそういうのを付けてあげて、自然に聞こえやすいようにしたりっていうのは考えています。

   一方、モニタースピーカーの方は普段ライブやってる時にもあると思うんですけど、これはハウリングとの戦いになるので、ギリギリのところとなると、おそらくメインスピーカーから出るとか、普段音楽を聴くようなバランスでは実はなくて、ちょっと不自然な音になってる。演奏だったり歌いやすいように作り変えているので、不自然なバランスかなとは思うんですけど。ハウリングポイントを取っていったりするので、イコライジングっていうんですけど、例えばここはハウリングが起こりそうだからここを取ります、みたいにしていると、やっぱりちょっと自然じゃないことにはなってくると思いますね。

   メインスピーカーから出てお客さんが聴く音に関しては、さっきお話しした、なるべく体感できるような音量感で、最大限楽しんでもらえるような音で出すっていうのがポイントですかね。

■配信の難しさ、ライブと配信における役割の違いとは?

グミ この配信先っていうのは実は僕もいまだに正解がわからなくて。一番難しいところなんですよ。なぜか配信で聴く音と会場でライブを見ながら聴く音は、明らかにどう頑張っても近付かないんですよ。でもライブ映像と一緒に見てるので、没入感みたいなものは提供したいなと思っていて、そこがすごい難しいんですよね。さっきお話ししたエアーマイクっていうのを立てて録音してても、耳で聞いている音にはやっぱりならない。どう頑張っても。なぜかというと耳ってすごい不思議なもので、脳の伝達というか、意識とかで聴こえ方が変わるんですよ。

   例えば、カクテルパーティー効果っていうのがあって。パーティー会場ってざわざわしててうるさいじゃないですか?でも、具体的にこの人の話を聞こうと思うとそこだけ聞こえるようになって会話できるじゃないですか。周りがガヤガヤしてる。でも脳みそがこの音を聞こうって思ってるから、それが聞こえるようになる。そういう状態があったりするので、マイクで録った音がそのままそれに適応しないというか。例えばステージ上のこの人だけを見てたら、その人の歌が聞こえるようになったりするし、そういう感覚は画面越しではどうしても作れない。人によっては、「ラインを混ぜないで、マイクだけでいいんじゃないか?」みたいなことを言いますが、僕はそれは正しくはないと思っているので。配信先については、会場の音っていうのは当然聴かせなきゃいけないんですけど、どちらかというと「ライブ版」みたいな、バランスが整っていて、その場の空気や雰囲気がちょっと入ってる、みたいな感じの作り方をすることが多いです。これも正しいかどうかちょっとわからない。僕はそう思うから、そう作っているだけって感じですかね。

 

琴山 今のお話とちょっと関連すると思うんですが、配信時には現場のライブ感の再現が至上なのか、それともそれ以上に目指すものがあるんでしょうか?

 

グミ そうですね。僕が配信で関わるときには、さっきお話しした通りやっぱり現場で聞くものの代替えはできないので。なるべく近いものを提供したいんですけど、それよりも配信として割り切って作っている所が大きいかなと思います。配信見て「あ、じゃあ今度ライブに行ってみよう」って思ってもらえたら勝ちかなと思ってるんですよ、役割として。

   配信の環境って、さっきの図のところで言うと、会場の音響と配信って基本的に別の人がやるようになってます。で、配信はあくまで会場の音響で作ったものを受け取って配信に乗せる…なんて言うんですかね?監視者っていう方が正しい。管理・監視なので、ここでどうこうする問題じゃ実はないんですね。

   メジャーみたいにドームでやりますみたいなときは、配信側に普段レコーディングをやっているエンジニアさんがいて、会場の音は会場の人が作って。バラの信号をレコーディングエンジニアさんがミックスして配信するっていうパターンもあります。色んな形があるんで、あくまで僕らが関わっているぐらいのライブハウスの規模の話としてお話ししたいんですけど、会場音響と配信の二人がいる場合に配信側で入るときは監視・管理なので、ここでどうこう作るっていうのは基本やらないようにはしていると。なるべく自然に、今出ている会場で出ているものを基準に配信っぽくするっていうのが僕の考えです。ここでいかようにでもいじることはできるんだけど、それは会場で鳴ってる音の意図を崩すことになるんで、やらないようにしている。そこはまあ、注意点ではあるかなと思いますね。

■音への評価をどう受け止めるか

内山 では内山からの質問なんですけれども、ご自身がPAを担当したライブ後は、それぞれのアイドルグループのファンの方のツイッターの反応を見たりといったエゴサはしますか?

 

グミ めちゃくちゃします。

 

内山 かなと思いました(笑)。先ほど正解が分からない、いろんな反応があるからっておっしゃってたので、、やっぱみますよね。アイドルとたぶん同じぐらいエゴサしますよね?

 

グミ 多分そうですね。次の日の夜ぐらいまではしてると思う。

 

内山 RAYの場合だったらどうやってエゴサします?結構RAYってエゴサするのが難しいから。

 

グミ 例えばワンマンだと、ハッシュタグみたいなものを作ってくれるとあれで見れますね。…僕が見てる理由は、これはもう客観視する必要があると思ってるんですよ。客観って、そのお客さんが言ってることが正しいとかではなくて、こういう意見あるんだなっていうのを得たいっていうのが意図です。

   なんでかっていうと、自分の中で「これが正しいんだな」っていう確証はありつつも、さっきも話した通り答えがないっていうところで、それが驕りになっちゃうなと思ってて。だからお客さんはどういう感じで見たのかとか、どういう風に受け取ったかっていうのを知ることは必要だなと。だからといって、「こう言われたから」って影響はあんまり受けないように実はしている。影響されすぎると今度はそこに寄って行っちゃうので、そうするとなんか軸がなくなっちゃうというか。なので、どういう感想を持っている人がいるかを知る目的でやっているっていう。

 

内山 なるほど。こだわりと客観視のバランスが絶妙で。

 

グミ 僕の立場はエゴを出す立場じゃないと思っているので、我を出しすぎちゃいけない、あくまで裏方っていう支える役なので。例えば100人来て100人が「音良くなかった」っていう感想があったら、ちょっとそれは怖いっていう思うけれども、さっきもお話した通り100人いたら100通りの答えがあってしかるべき。で、そこに対して1個ずつ寄り添ってしまうと違うかな?と。そこのバランスをとるようにしてますね。まあ、気にはしますけどね。

 

内山 でも、自分も結構エゴサするんですけど、「今日グミさんのPAだから優勝」みたいな。みんなグミさん大好きだなって思ってて。

 

グミ それなんかね、他のグループさんにも言われるんですけど、僕は全然そんなつもりないから、よくわからないっていうか、理解できないところ……。

 

内山 これからもよろしくお願いします(笑)。

 

グミ こちらこそ、是非是非よろしくお願いします。

 

内山 ありがとうございます。

■「唯一出せる自分」、楽曲における音響での演出

甲斐 次に自分からの質問なんですけど、RAYからのこうして欲しいっていうお願いや調整で、PAをしていてこれは難しいっていうものはありましたか?あと個人的に、「moment」という曲の一番ラストのパートで「ずっと今だけを抱きしめて〜めて〜めて〜」と歌声がマイクを通ったらめっちゃエコーして響くのが、ライブで歌っててテンションが上がるポイントなので、そういった音響演出のポイントについてなども知りたいです。

 

グミ 基本的にはさっきもお話しした通り、RAYでは儚い声と、バンド感とかシューゲイザーサウンドみたいなところの共存が一番難しいと思っていて。やっぱそこに尽きるかな。それ以上も以下もない...って言ったらなんか言い方悪いけども、そこが一番かなと思いますね。

   で、「moment」の件は、実はここが僕が唯一出せる自分みたいなところかなと思ってるんですけど、これをやること自体が目的ではなくて。音源とかがライブで再現されて、しかもそれがオケに組み込まれてないもので再現できたら、やっぱお客さん的にも嬉しいかなと思ってて。専属で乗り込みって言われる僕らみたいな人が居る理由かなと思ってるんで。結構音源で聞いたらちょっとしか分からないことも、再現できないかなとやるようにはしています。あと、さっき話した曲ごとの雰囲気の違いみたいなことも、「この曲のこのフレーズはちょっと広がった方が気持ちよさそうだな」とか、「ここは逆にそうしない方が良いんだろうな」みたいなのは、もうなんか常時変えてる。その日のテンションでも変えるし、結構そういう意味で遊んでいるポイントかなと。

 

甲斐 そうなんですね。自分でもちょっと感じとれる部分があったら、これから見つけていきたいと思います。

 

グミ ただ、それがあんまり前に出すぎると今度イヤらしくなっちゃうんで、あくまで世界観を崩さないレベルにしようとはしています。

 

琴山 最後に私からの質問なんですが、たくさんライブでPAをされていると思うんですが、ご自身もライブに立とう、出ようと思うことはありますか?

 

グミ 僕はですね、ないですね。

 

(メンバー一同笑い)

 

グミ もともと16から18ぐらいまでバンドやってたんですよ。で、バンドやってたんですけど、人前に出るのが苦手だってことに気付いて。人前に出たくないんだけど、このライブっていう環境は好きだなと思ったときに、「向かいになんか触わってる人いるじゃん」って。で、あの人になりたいと思ってPAをやり始めているので。バンドをやる楽しさは知ってるから、そういう意味ではたまにやりたいなと思うんですけど、基本的には人前に出たくないっていうのが強いかもしれないですね。だから出ようと思うかっていう質問に対しては、出たいと思わないっていうのが回答かなと。

 

琴山 ありがとうございます。本日はPAのグミさんにインタビューさせていただいたんですが、音と向き合うだけではなく、人と向き合ってお仕事されているなって言うのがすごく伝わってきました。これからもよろしくお願いします。

 

グミ よろしくお願いします。

 

琴山 PAさんのグミさんでした。

 

メンバー一同 ありがとうございました。

 

グミ ありがとうございました。

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今回のメンバーインタビューでは、音響(ライブPA、配信)の役割、音の作り方や楽曲のリアルタイム調整といったテクニカルな仕事から、音を介してメンバーを察し、メンバーとのコミュニケーションからより良い音を作っていくというメンタル面を含んだ仕事まで語っていただいた。運営インタビューではPAと仕事をする上での「トラックイロハ」「リハーサルイロハ」から、より詳細な楽曲ごとの調整の行い方、モニターに対する考え方など、より深い仕事術へと迫っていく。

 

Special Interview 音響 大畑“gumi”修平さん 〜運営インタビュー編〜

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