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Special Interview
スチール撮影 早川結希さん
運営インタビュー編

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アーティスト写真ではグループの世界観を一枚の写真に落とし込み、ライブ撮影では動きのあるステージを一瞬の写真に落とし込むスチール。RAYのアーティスト写真やグッズ写真、ワンマンライブでのスチール写真を撮影していただいている早川結希さんに、RAY運営がインタビューを行った。スチールカメラマンになった経緯、良い写真とは何か、そして良い写真を撮るための方法論について伺っていく。

■カメラマンになった経緯

運営1(コンセプト等担当・古村) 運営の古村です。今回は小林とともにインタビューをさせていただきます。よろしくお願いします。

 

運営2(現場マネジメント、テクニカル担当・小林) よろしくお願いします。

 

早川結希(以下早川) よろしくお願いします。

 

運営1 まずはカメラマンになろうと思った理由やカメラマンという仕事に就くまでの経緯みたいものを読者に伝えられたらなと思っておりまして。どういったきっかけ、どのような流れで今のお仕事になられたんでしょうか?

 

早川 カメラマンを目指そうと思ったのは大学4年生とか3年生とかそれぐらいで。もともと料理を作るのがすごい好きで。自分で作った料理を携帯で写真に撮ってSNSにアップしてたんですけど、それを「もっときれいなカメラで撮ってみようかな」と思ってカメラを買ったのが最初です。

   そしたらカメラにハマって、友達のプロフィール写真を撮らせてもらったりするようになって。そのうち友達が別の友達を紹介してくれたり、徐々に知らない人を撮るようになって輪が広がっていって。それでもう仕事になっちゃいそうだったんで、本当はエンジニアの就職先が決まってたんですけど、内定を辞退して。

 

運営1 人生を分ける決断ですね(笑)。

 

早川 ですね(笑)。大学卒業の1か月前に、内定先の人事の人に「やっぱりカメラマンになります」って言って。それで春からもう新卒フリーランスみたいな形でカメラマンとしてやり始めたって感じですね。

 

運営1 最初は友達的な、趣味的なところでやっていたのが、だんだんお金をもらってやるようになっていったと……カメラマンになるルートみたいなのが、読者も含めて結構分かっていないと思うんですけれど、多くの場合は、写真の専門学校みたいなのに行ったりしてなる人が多いんですかね?

 

早川 もともと写真に興味があったら、そういう道を選ぶ人が多いですね。写真の専門学校に行って、その後撮影スタジオに就職して。スタジオを利用するプロのカメラマンのお手伝いをする「スタジオマン」として何年かやって、スタジオを卒業してから師匠を探すんですよ。自分が好きなカメラマンの人に「弟子にしてください!」って言って。その師匠への弟子入りが認められたら、「直アシ」って言うんですけど、何年かアシスタントとして師事して、そこからまた何年か経って独立する……っていうのが、昔からの流れとしてありますね。

■Superbus(スパルバス)というチーム

運営1 早川さんは完全に独自のルートでカメラマンになられてますね(笑)。カメラマンの「なり方」としては結構異端ですね。いきなり新卒フリーランスみたいになった後、今のSuperbus(スパルバス、Superbus Inc.)という事務所に所属するまでの流れみたいなのはどんな形なんでしょう?

 

早川 フリーで何年もやってて、Superbusの鈴木さんっていう人と会ったのが最初の接点なんですけど。彼と共通の友達がいて、その友達の家で開かれたホームパーティに僕は料理を作りに行ってて、そこに鈴木さんがたまたま客として食べに来ていたんですよ。

 

運営1 すごい出会い(笑)!。カメラマンとしてというよりは料理人としての出会いだったんですね。

 

早川 みんなお酒飲みながらわぁわぁやってるんですけど、おつまみを10品とか15品とか作っていく中で、鈴木さんが毎回感想を言いに来てくれて(笑)。

 

運営1 それは心打たれますね(笑)。

 

早川 僕はキッチンで立ってて、リビングはちょっと離れたところにあるのに、毎回わざわざ「めちゃくちゃ美味い」と伝えに来てくれる。そこで仲良くなったのが最初ですね。だから「同じ業界の人が集まりました」みたいな集いじゃなくて、たまたまいろんな人がいる中で、鈴木さんがヘアメイクをしていて、僕はカメラマンで、「なんか近いですね」みたいなところから「一回撮影しましょうよ」みたいな流れで。

 

運営1 今は完全にSuperbusに所属していて、Superbus経由でしかお仕事は取ってない状態なんですかね?

 

早川 個人でも全然取ったりします。事務所経由のお仕事もあって、自分で取ってくる仕事もあります。

 

運営1 僕ら運営はSuperbusを「鈴木さんチーム」って呼んでるんですけど、ヘアメイクさん、スチールさん、一式バッと投げられるみたいな安心感があって。この一年半ぐらいですかね、かなりお世話になっていて。個別にアサインしなくて良いので、ものすごく助かっております。ヘアメイクの山田さんのインタビューの時にもお聞きしたんですけど、Superbusには阿吽の呼吸で伝わるチーム感がある感じですかね?

 

早川 それはありますね、いつも一緒に撮ってるメンバーなんで。どういうことを考えているかとかも、もう言わなくても分かるし、そういうのはありますね。

■ライブ撮影とアー写撮影、それぞれの勘所

運営1 RAYでもアー写撮影からグッズ、ブロマイド、写真やアクリルスタンドなど、本当にいろいろ撮っていただいていて。1個前のワンマン(RAY 3rdワンマンライブ「moment」)もライブ撮影をしていただいて。メンバーインタビューではライブ撮影が一番大変だというお話があったんですけど、ライブ撮影って事前にどれぐらいの下調べが要るんでしょうか。「運営から各曲の動画を事前にもらえるとありがたい」みたいな気持ちとかありますか?

 

早川 いただけるときは事前に観れた方がありがたいですね。振りに合わせてなんかポーズするとかは、分かってた方が良い。観ていてリアルタイムで「誰々が来た」みたいな感じだと困っちゃうんで(笑)

 

運営1 そうですよね。でないと「引きの画を撮るためにどのタイミングで後ろに行くか」みたいな判断が賭けになっちゃいますもんね。

 

早川 そこを把握していないと賭けになっちゃいますね(笑)。

 

運営1 今回は諸々を事前に共有させていただきます(笑)。

   ライブ撮影から話が変わりアー写撮影なんですけど、僕がいつもすごいなと思っているのが、グループのアー写って個人を撮るのとは違って、人間同士を空間的に配置する設計力が要りますよね。というのは、早川さんのお話というわけではなく一般論として、例えば頭の中で「こういう構図で撮りたい」っていうのがあったとしても、現場で実際に見てみると「なんだかなー」みたいになったりすることがあると思うんです。

   なのでお聞きしたいのは、白と緑っぽい衣装(3rdワンマンでお披露目した衣装)のアー写を早川さんに撮っていただいて、構図も早川さんに決定していただいたと思うんですが、あれってもう本当に、その場の感性で決めていた感じなんですかね?

 

早川 もう並びとかはその場の感性ですね。

 

運営1 メンバーをソロで撮る時も、全体、メンバー4人で撮る場合も、ちょっとずつアイドルのポージングを変えていく、ちょっとずつ構図を変えていく……みたいな技術が傍から見ててすごいなと感じます。こういった技術は純然たる経験で培われたんでしょうか?それとも、他の方の写真集を見て研究するとかして感性を鍛えていったんですか?

 

早川 まあ経験値……経験値と、生活していく中でSNSとか本とか町中に貼られているポスターとかそういうのを見て、「なんか良いな」と思うものはメモするというか、保存するようにはしてますね。「なんか使えるかな?」という感じで。

 

運営1 早川さんは構図を作るのは不得意じゃないな、っていう感覚ですか?結構見ていたら思い浮かぶ?

 

早川 そうですね。対象によってはイメージがサッと湧く時と湧かない時はありますけど。

■被写体センスと「作品撮り」について

運営1 実は今年の3月に古村個人として現代美術のグループ展をやりまして。そこではアイドルではない女の子の撮影を早川さんにお願いしました。早川さんから見て、アイドル、一般人どちらでも構わないんですが、「被写体センスあるな」、もしくは「モデル感がある」と言っても良いかもしれないですが、どんな子にそういった被写体センスを感じられますか。言葉にするのは難しいかもしれないんですけど。

 

早川 ガチガチに緊張しているとかは除き、取りあえずリラックスしているのは前提として、自然なのを撮るのか、キメたのを撮るのかにもよってきて。本当にもうめちゃくちゃ綺麗にポーズしてほしい時もありますし、そうじゃなくてニコパチ(注:カメラに向けニコッと笑っているところをパチっとシャッターを切って撮ること)で、自然に笑っているところを撮りたいみたいな時もあるので。一概に「こういう人が」っていうよりは、その人個人の良さ、笑顔が素敵な人だとか、すごいポージングできる人だとか、どういう人かっていうのを最初に見て、徐々に撮っていく中で「こういう風に合わせていこう」と自分の中で路線を決めていきます。

   撮りやすい被写体の人ってあるんですけど、でもスムーズに撮ることが目的っていうよりは、結果としてそのアウトプットをどういう風にしたいかっていうのが重要で。良い写真を目指すなら、結局その被写体の人の良さをどう写し取るかが大事なのかなと思いますね。

 

運営1 撮りやすい子というのは、自分を表現できる子なのか、それとも早川さんの意図を汲んで自分を変形させられる子なのか、どっちのタイプなんですかね?どっちもですか?

 

早川 僕が撮りたいものをとる時は、やっぱ僕の撮りたいものに合わせて変形させられる子が良いですね(笑)。

 

運営1 その流れで、「作品撮り」っていう単語があるじゃないですか。案外知らない人も多いと思うので、「作品撮り」とは何かをちょっと説明していただけますか。

 

早川 作品撮りは、仕事としてではなく、金銭とかを発生させず、カメラマンとかヘアメイクとかクリエイターが集まって、みんなで「こういうのを撮りたいよね」っていうアイデアを出し合って創作する撮影って感じですかね?

 

運営1 その作品はどういった形でその世に出るんでしょう?

 

早川 個展に合わせて出展したいから、それに合わせて撮る場合もありますし、どこに出すとかは決めずにやることもあります。

 

運営1 作品撮りをしたいってなった時の被写体って、どんな感じで選ばれるんですか?

 

早川 作風のイメージに合うモデルを選ぶって感じですかね?

 

運営1 いわゆるモデルさんから探すみたいな。

 

早川 そうですね。

 

運営1 一旦、古村からの前半質問が終わりまして、この後は実際に運営の中で写真を撮影している小林(運営2)にバトンタッチします。

■カメラにおけるプロとアマチュアの違い

運営2 早川さんはアマチュアの時代もプロの時代も経験されています。カメラは趣味でやっているアマチュアの方もたくさんいらっしゃる中で、プロとアマチュアの違いはどういうところにあると思いますか?

 

早川 意識の違いですかね?プロの中でも短いキャリアの人から何十年もやってる人もいますし、アマチュアの人でも子供の頃からカメラ触わってますみたいな人もいますし。技術とか期間はあんまり関係ないと思ってて、「自分はプロとしてやる」っていう意識がある人がプロ、みたいなイメージがありますね。

 

運営2 なるほどですね。そこは自分が撮りたいものを撮るのか、人からお願いされたものを撮るのかっていうところですかね。

 

早川 そういう分類の仕方もありますね。でも自分の撮りたいものだけを撮ってて、その写真が好まれて生計が立っちゃうプロの人もいるんで。商業的なカメラマンの人だったら、もちろんお客さんが求めているものを再現するっていう能力も必要なんですけど。まあ、どっちもいますね。撮りたいものだけ撮る人も、合わせて撮る人も。

 

運営2 早川さんはどちらの仕事の方が多いですかね?

 

早川 僕は再現する方が多いですね。基本的には9割ぐらいは求められているものを撮ることが多いですね。タレントさんの写真集を撮ったりするんですが、本全体のコンセプトや撮影場所、「この場所では開放的な感じで」といった大まかなイメージなんかは事前に決められているんですけど、現場ではカメラマンの自由みたいな感じになることが多くて。そういう時は、僕にカメラを頼んでもらってるし、「早川さんの雰囲気を出してください」と言われているので、もう自分の撮りたいように撮ります。それが1割くらい。なので求められるものを撮影するのが9割、自分の撮りたいように撮るのが1割ぐらいという感じですね。

 

運営2 やっぱりその1割の現場の方が楽しかったりします?

 

早川 なんだかんだそうですね(笑)。毎年撮影を振り返って、今年一年で何が印象に残ってるか振り返ったら、2年ぐらい連続でやっぱ写真集だったんですよね。結局印象に残っているのはそれですね。

■カメラ撮影の実際

運営2 次は技術的なことを聞いていきたいなと思うんですけど。カメラ本体やレンズはどれぐらい持っているものですか?

 

早川 カメラは5台ぐらい。レンズは多分2、30本ぐらいありますね。

 

運営2 凄いですね。カメラはそのミラーレスとか一眼レフとかあると思うんですけど、その種類が違うって感じなんですか?

 

早川 そうですね。機種とかまあ種類が違います。動画用とか。コンパクトな、荷物をそんなに持っていかない用とか、がっつり撮るとき用とか、高画質なカメラとかそういう感じですね。

 

運営2 それは現場に応じて、最適なものを持っていくっていう。

 

早川 そうですね、そんな感じです。

 

運営2 一回の撮影でレンズは何本ぐらい持って行きますか?

 

早川 多くて3本ぐらいですかね?大体2本ぐらいです。

 

運営2 被写体との距離感をどれくらい広く取れるかで決める感じなんですかね?

 

早川 そんな感じですね。

 

運営2 なるほどですね。そこはやっぱり事前に話を聞いて、「どういう場所でこういう撮影するから」みたいな計画を決めて、最適なレンズを選んで持って行くみたいな。

 

早川 そうですね、そんな感じです。それを見誤ると大事故起こすので。行ってみたら意外と狭かったみたいな。そんな時に望遠レンズしか持ってないとかになっちゃうと、もう「全身撮れません」みたいなことになっちゃうんで(笑)。そこはちゃんと調べてから行かないといけない。

 

運営2 前情報が足りなくて、そうなりかけたこともあったりするんですか?

 

早川 ありますね、一回。スタジオ行ってからレンズを忘れてきたことに気付いて。最初の1時間でヘアメイクをしている間に、家に帰る時間はなかったので、クライアントにバレないように近くのビックカメラに行ってレンズを買ってきました(笑)。

 

運営2 毎回そうやって選んで持って行かないといけないってなると、やっちゃいますよね(笑)。僕も運営をしていていろいろ持っていかなきゃいけない荷物とかあったりして、やっぱりそういう時もあります。

 

早川 僕は毎日撮影の仕事なので基本的に装備は決まっているし、バッグも同じのを使っているので、めちゃくちゃ取り替えてとかはそんなにないんですけど。なんかバッテリーの充電出来てないとか、SDカードが入ってないみたいなことは、まだ頻繁に仕事が入っていなかった最初の方は結構ありましたね。

 

運営2 それは僕もやっちゃってますね……(笑)。

■「運営が撮影する写真」の特長

運営2 さっきもちょっと話が出たんですけど、RAYでも運営としてカメラを購入しまして。ワンマンとかはちゃんとプロの方にお願いして、きちっとしたスチールを撮りたいんですけども、やっぱり普段はライブが頻繁にある中で毎回プロの方にお願いするわけにも行かない。でもある程度クオリティを担保したものを出したい、ということでカメラを購入したんですね。なので、アイドル運営、僕たちに向けて、カメラが上手くなるコツみたいなものを教えていただきたいなと思っています。

 

早川 運営の人とかマネージャーさんとかだったら、本人たちともう信頼関係が元々築けてるので。僕たちには撮れないような、普段一緒に居るからこそ撮れる自然な写真とかを撮ってほしいですね。オフショットみたいな。ああいうのはなんか撮れないんですよね、僕たち(カメラマン)って。何回か会って関係性が築けている人や、最初からむちゃくちゃフランクな人だったら撮れるんですけど、基本はそうではないので。変に作ろうとせず、自然なところを撮るのが良いと思います。

 

運営2 なるほど。オフショット的な、作ってない感じの様子とかをこれからバンバン撮っていきたいなと思います。

早川 あとは、照明をちゃんとセットして撮る写真じゃなくて……アイドルさんでチェキの写真が盛れるみたいな人がいるじゃないですか。あのチェキの飛んでる感じが良いみたいな。あれって結構今の流行りで、カメラに乗ってるフラッシュを焚いて撮影するのはおすすめですね。多くの機材はいらなくて、本当にシャッターを切るだけで撮れるので。

 

運営2 カメラに乗っているフラッシュというのは?

 

早川 カメラによるんですけど、カメラに内蔵されているフラッシュがあるじゃないですか。それで撮っちゃう。

 

運営2 ストロボを焚くということではなく、そのカメラのフラッシュでってことですね。

 

早川 そうですね、はい。

 

運営2 なるほどですね。今持っているカメラはキャノンのミラーレスなんですけど、そのカメラがフラッシュ内蔵じゃないやつなんです(笑)。

 

早川 じゃあ、ちゃんとしたカメラですね。ちゃんとしたカメラ、高いカメラになると、なぜかフラッシュって内臓されなくなるんですよ(笑)。

 

運営2 だから、室内で撮ると「あれ暗いなあ」と思って。「フラッシュを買わなきゃな」ってちょうど思ってたところで。

 

早川 カメラの上に乗せられるフラッシュは1万円しないぐらいで売ってるので、1個買うと良いかもしれない。

 

運営2 だいぶ踏み込んだ話になりますが、カメラの設定がいくつかあると思うんですけど、シャッタースピードとF値(絞り)とISO感度、基本はこの三つのパラメータを決めて、後はフォーカスを決めて撮るっていうのが基本になるんですかね?もっとなんかいろいろ設定を細かくされてたりします?

 

早川 大体それくらいですかね。あとはホワイトバランスぐらいですかね。

 

運営2 色味ですね。僕は最近ライブ撮影もしてるんですけど、めちゃくちゃ難しいですね。それらのパラメータをその場で調整していくのは。

 

早川 ライブ撮影だと1つのステージでめっちゃ環境が変わることはないので、最初に決めちゃえば良いみたいなイメージがあります。

■レタッチの技術とコンプレックスの関係

運営1 ではここから再び、古村からの質問です。質問の前にちょっと読者向けの説明を入れますと、実はカメラマンさんは写真を撮って、それをそのまま運営に渡して終わりというわけじゃなくて、レタッチと呼ばれる過程が存在します。たぶんレタッチ自体知らない方もいると思うので、レタッチがどういう過程か説明していただけますか。

 

早川 レタッチは、写真を撮る中で、現場では対応しきれなかった部分を後処理で加工を加えたりして修正をする作業ですね。

 

運営1 アー写に限らず、グッズのために撮った写真とかも大体はある程度レタッチをしてもらうことが実際には多くて。例えばよくあるのが、候補の写真があって、グッズとしてこれとこれを使いたいってなったら、「この2枚をレタッチしてください」みたいな形でやり取りすることが非常に多いという感じですね。レタッチっていうのは特に重い作業ではないというか、もう手癖でサッとできちゃうものなんですかね?

 

早川 内容によりますね。めちゃくちゃ大変なやつは何時間もかかりますし。

 

運営1 「大変なレタッチ」というのは、どういった要望を出された時でしょうか?思い出などありますか?

 

早川 大変なので言うと、人物の撮影の場合ならお肌ピカピカにするとか、毛の一本一本まで修正するとか。きれいにヘアメイクさんが付いて撮影しても、やっぱりアホ毛みたいなのとかあったりするんですけど、そういうのも一本一本。

 

運営1 それはすごい作業ですね(笑)。

 

早川 「誰がこんだけ拡大してみんねん?」みたいに思うんですけど(笑)。他に服のシワを伸ばすとか、輪郭をちょっとイジるとか。

 

運営1 多くの男性は、自分の自撮りを撮って、それを修正するなんていう経験自体があんまりないから、写真に対してどんな加工が可能か自体を知らないと思うんですよね。メンバーにレタッチ要望を聞いたりするんだけども、「ここをこうしてください」と上がってくる要望を聞いて、それはもちろんアイドルという職業柄普通のことだとは思うんだけど、「え、そんなことが可能なの?」って驚くことがあります。想像以上にレタッチはいろいろ可能なんだなあっていう印象がありますね。

   ただレタッチって、女の子のコンプレックスみたいなところと関わっていて。女の子側が「これこれ、こうしてください」と言って早川さんに直してもらって戻してもらって、再び「もっと○○してください」みたいな要望が出たり。ああいうのって早川さんから見てどんな風に感じられているんでしょう?ちょっと質問が曖昧なんですけど、例えば、「そこまで極端に修正しなくてもいいのにな」とか。その子のコンプレックスが垣間見えると思うんですけど、どんな風に感じられつつレタッチされているのかなっていう、ちょっと感覚が聞きたいなって。

 

早川 「そんなにやんなくてもいいのにな」って思うこともありますね。レタッチについては撮影以上に深く自分の中で向き合ったことがあって。本当に「そこまでやれる?」ってぐらい出来ちゃうんですよ。ただそれってやり過ぎちゃうと、その人の顔の個性を変えちゃうことになるので。そう考えた時に、自分の中でどこまでレタッチをどう行うかっていうラインはある程度決めていて。なので結構ナチュラルにやることが多いですね、一回目は。それに対して「もっとこうしてください」っていう要望があったら、それに合わせてレタッチするっていうのはよくありますね。

 

運営1 先ほどもあった、撮影現場でカメラマンさんやヘアメイクさんから見たら「もっとこうしたら良いのに」と思うけど、女の子は「自分はこう見えたい」というのがあってズレがある、という話と繋がってくる話ですね。

■良質な写真と何か

運営1 あと2つ質問がありまして。撮影技術とレタッチ技術、2つの技術があるとして、いっぽう写真には最終的なアウトプットがある。その質を決めるのは何ですか?と聞かれたら、早川さんはどうお答えになりますか?良質な写真っていうのは何なんだろう、みたいな。

 

早川 究極言っちゃうと、僕はありのままが写ってる写真、何も作られてない写真が一番綺麗だなって思いますね。なんか文字通りですけど、「真(まこと)を写す」。どこかのカメラマンの言葉で見たんですけど、「写真っていう言葉は『真実が写る』っていう自動詞じゃなくて、『真実を写す』っていう他動詞なんだ。それが出来ないといいカメラマンじゃない」みたいな。「写真っていうのは真実が写るものじゃなくて、真実を写すものだ」といった言葉を見た時に、結構ハッとして、確かになと思いました。

 

運営1 ちょっと逆説的ですけど、ありのままを写すには技術が要るっていうのは面白いですね。

■印象に残っている撮影エピソード

運営1 最後にちょっとオチっぽい質問なんですけど、今までで一番難しいと感じた撮影シチュエーションやエピソードをお聞かせください。奇抜なものでも面白いものでも。

 

早川 難しかったのはいっぱいありますね(笑)。おかしかった撮影で言うと、大学生の頃にSMクラブの女王様の撮影がありましたね。名古屋のクラブの人の依頼で、その人が東京に来るのに合わせて東京で写真を撮って欲しいという依頼で。撮影場所はお台場かどこかのめちゃくちゃ高級な会員制ホテルで、入口が僕ら学生は見たこともないような、真っ金金のめちゃくちゃ背の高い扉で。

 

運営1 怖いですね(笑)。

 

早川 すごい怖くて。ラウンジみたいな所でその人を待ってたら。なんか奥からコツコツコツっていう靴音が聞こえてきて。音のする方を見たら、もうなんかお尻丸出しの「絶対あの人やん」ていう方が(笑)。女王様の隣にはスーツに首輪を付けた召使いの男性もいるんですよ。「大丈夫か?」と思いながらも、お願いしますって言って。撮影では、召使いの人を鞭で叩いているところとか、椅子に座って足を組んで読書してる女王様の靴を召使いが舐めている写真とかを撮りました。

 

運営1 どこまで載せれるか分からなくなってきましたが(笑)。

 

早川 でも撮影していく中でだんだん打ち解けていって、女王様と召使の人の関係性を聞いたんですよ。従業員なのかな?と思って、「いつも一緒にお仕事をされてるんですか?」って。そしたら、「実は息子なんです」って言われて。

 

運営1 ちょっと(笑)!!

 

早川 息子さんに鞭やったりとか、靴舐めさせたりしてましたね……これがインタビューラストで大丈夫ですか(笑)?

 

運営1 たぶん、大丈夫だと思います。でも一応念のため、奇抜じゃないほうの、感動したシチュエーションとかも聞いておいた方が良いかもしれない(笑)。印象に残ってるシチュエーションや、「この写真撮れて良かった」みたいな……。

 

早川 わかりやすいので言うと、テレビのスチール撮影ですかね。芸能人の人を撮る初めての撮影で。自分がっていうより、僕の家族とかが知っている人を僕が撮って「こんな活動しているよ」っていうのをテレビで見せられた……っていうのは良かったですね。

 

運営1 良いエピソードで終われそうです(笑)。

   以上で用意した質問が終わりました。本日はインタビューありがとうございました!

 

早川 ありがとうございました。

今回の運営インタビューでは、カメラマンになった独自のルートとSuperbusとの出会い、撮影の技術論、「被写体を活かす(真を写す)撮影」の意識まで伺い、運営によるカメラ撮影に対する指南もしていただいた。メンバーインタビューでは、現場における空気作りやメンバー・運営との様々な調整やコミュニケーションが語られている。未読の方はぜひお読みいただきたい。

 

Special Interview スチール撮影 早川結希さん 〜メンバーインタビュー編〜

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